「事件に巻き込まれた人生に時効はなく…」罪の声 Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
事件に巻き込まれた人生に時効はなく…
予告で面白そうだと思い
アイアムアヒーローの脚本の人だしと
期待して観賞
原作は未見
モデルになったグリコ森永事件は物心がつく
ギリギリ前で当時の記憶はほとんどありませんが
お菓子のパッケージがフィルム包装になったのは
この事件からと言うのは有名ですよね
感想としては
・テンポ重視で追いやすい推理パート
・常に緊張感があり時にドキュメンタリータッチ
・声に翻弄された人々の運命
・それぞれの立場が持つ意思
色々要素が詰まりながらも上質にまとめられ
今年ここまで観た邦画でも相当良かったです
京都で父光男を継ぎ同じテーラーを営む曽根俊也
ふとしたキッカケで自宅から出てきた
「1984」とラベルにあるテープと英字の手帳
そのテープには(実在のグリコ森永事件モデルにした)
「ギン萬事件」で使われた謎の子供の音声…
そしてその声は幼少期の俊也の声であり
俊也は妻子に黙って真相を究明しようとします
そんな折丁度大日新聞社文化部の記者阿久津英士は
上司の提案でギン萬事件の前年にオランダで起きた
社長誘拐事件を調べていた東洋人の存在をロンドンまで
追っていましたが取材を進めるごとに事件の真相から
ギン萬事件に使われた子供の録音音声
その主がどう事件に巻き込まれ人生を翻弄されたか
という真実が浮かび上がってきたのでした
日本警察史上最大の劇場型犯罪と言われたグリコ森永事件
県警の意地に張り合いや縦割りっぷりで犯人を逃し続け
警察信用の失墜にも繋がった事件と言われています
その事件は当初は社長誘拐だったもののその社長は
身代金取引前に逃げ出し
その後は全国のお菓子会社や小売への毒物混入など
犯行が異質化していきました
そして「キツネ目の男」などの似顔絵は事件の詳細を
知らない人でも交番の掲示板等で記憶にある人は
多いかもしれません
この映画はそうした事件をベースに起こされた
フィクショナルな真相の部分を解き明かしながら
時効になったこの事件の真相を追う当事者の俊也
新聞記者の阿久津それぞれがそれをする理由を
自問自答しながら犯行を画策した側の人間の目的
主張も取り上げ「知ろうとすることの意義」のあり方も
問う作品になっています
展開的にはまるでファミコン時代の推理アドベンチャー
のような一本道展開でテンポは早いです
そんなにうまくいくのかと思う部分もありますが
映画の尺にはこれでいいのかもしれません
一部俊也の事件対する苦しみが伝わってこない
というレビューも目にしますが
俊也は事件と無関係の光男の背中見て育ったわけで
自分が関わってしまったというショックよりも
同じような経験から人生をメチャクチャにされた
姉弟への気遣いなどができる心優しい男なんだという
描写が十分あったのでそうは思いませんでした
ただ俊也も母が録音の真相に関わっていた事実には
相応にショックを受けていると思います
この辺の表現に関して星野源はハマっていたと思います
小栗旬も30半ばを過ぎて味が出てきましたね
こうした社会派作品に製作から入り込んで出演もしつつ
作っていくマット・デイモンやブラピのような
立場に興味はないのかな
そういう活躍もこれから期待したいところです
観る機会があれば是非オススメしたい作品です
たまたま観るにせよ某とんかつ映画より断然こっちです