「動乱の70年代を過ぎて、どう生きて来たのか(狂った化石)」罪の声 bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
動乱の70年代を過ぎて、どう生きて来たのか(狂った化石)
え。闘争?逃走じゃん。ってなりましたけど。何はともあれ年一候補でした。
製作陣営に名を連ねる面子で、この内容ってのはかなりの驚き。団塊世代の「闘争」を否定はしてませんが、変わらない姿を「化石」なんて呼びます。1984年のままだ?いえいえ、1970年のままでしょ。ってのは置いといて。
製作費をたっぷり使いました感が良いです。やっつけ感が全く無くて迫真。画も丁寧。役者さんはですね。星野源が気にならないならば、ちょい役の脇役さんまで、全く手抜き無しで、邦画ファンなら「豪華」と言う言葉を使いたくなるであろうくらいに贅沢です。ストーリーも好きな類い。堪能してしまいました!
全ての始まりは、生島の警察と社会に対する復讐心。生島の誘いに曽根達雄の「正義心」は奮い立ち、株の空売りで金を得ようと計画を練る。それは「金持ちから金を巻き上げる」事にはならないし、何より誘拐監禁も、脅迫も、毒入り菓子も、卑劣極まり無い。35年間、それは正義だったと思っていたなんて。まさに化石だよ。しかも狂ってます。
自分は正しい。正義は我にある。だから何をやっても許される。的な。大嫌いですわ、この手合いが。
少年時代。目の前で事故で姉を亡くし、それは自分のせいだと自分を責め続け。母親を一人残して逃げたと自分を責め続けたソウイチロウ。この母と息子の再会シーンが染みますだよ。ソウイチロウのヘビーな人生には胸が詰まりますだよ。
亜久津さんを見ていて思います。新聞社に、彼の様な矜持や良心を持った記者が、どれだけ居るんだろうか?
俊哉の父、光雄はテーラーとしての道を誠実に歩み続けた。その兄は活動家として奮い立ち、罪の無い人々を巻き込んで犠牲にして来た事を、正義だったと言い放つ。
生き方の話だよなぁ、この兄弟の対比。前を向いて、足元を見て、自分の足で立っている。そんな生き方をした光雄と、している俊哉。と、英士が素敵に見える映画でした。
望には生きてて欲しかった。
良かった。とっても。