「sir.」あなたの名前を呼べたなら 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
sir.
じわじわっと、じわじわっと、胸に訴えかけてくる。どうしようもない格差社会、縛られた村の因習。それでもお互いが一人の男、一人の女として相手を理解することで、その理解は愛へと高まっていく。・・・それでも。
百年も前にさかのぼれば、日本だってこうだった。召使いはあくまで召使い。いいとか悪いとか、そういう現代の価値観でははかれない。結ばれるとしても、せいぜい妾だった。そんな時代と、今のインドが同じということ。だけど、劇中では、都会の若者の意識が変わってきていると言っていた。だから、アシュヴィンとラトナのような関係も、あと何十年か経てば当たり前になるかもしれない。だけど、今はまだ無理なんだ。それを、アシュヴィンは打ち破ろうとしている。ラトナはまだ縛られている。その隔たりがずっと並行のまま続いて行く。
そして、そこへ持ってくるラストの一言。上手いなあ。実に心地よい余韻。このあとの困難はさぞ辛かろう。越えられない壁もあるだろう。だけど、その一言を言えた勇気があれば、乗り越えられるんじゃないか、このまだ格差が横たわる閉鎖された時代を、ぶち壊す先導者として。そう思わせてくれる、一言の呼びかけだった。
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