劇場公開日 2019年8月2日

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「非常にシンプルで細やかなラブストーリー」あなたの名前を呼べたなら andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0非常にシンプルで細やかなラブストーリー

2019年8月6日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

歌って踊らない(踊りのシーンはあるけど)そんなに長くないインドの映画は、ものすごくシンプルなラブストーリー。結婚式直前で婚約者が浮気して破談になってしまったお金持ちの男性と、結婚4ヶ月、19歳で未亡人になってしまった住み込みメイドの静かな恋愛。
男性はアメリカで暮らしていた過去があり、メイドたる女性もきちんと人として扱う。女性は傷ついた男性をそれとなく慰める。
ふたりが本当に少しずつ、そしてぎこちなく距離を縮めていく感じがとても初々しいというか...美しい。ほんのちょっとしたことばや、仕草に感情が如実に現れる様。本当にささやかなシーンの積み重ねでできた繊細さ。
しかしふたりには厳然たる「階級差」があり、加えて女性は「未亡人」であり、決して婚家から逃れられないという宿命を背負っている。突っ走ろうとする男性を諫める彼女が切ない。夢があって、愛があって、そしてどんなに頑張っても逃れられないものがあるということ。
それでも、ラストはほんの少しの勇気で終わる。非常にささやかな終わり方だけれど、仄かな光のような希望が持てる最後だ。
近年稀に見る邦題の秀逸さも評価したい。

andhyphen