「“ミッシング・リンク”…それは、進化を解く謎と友情の印」ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
“ミッシング・リンク”…それは、進化を解く謎と友情の印
ハリウッドのアニメーション・スタジオと言えば?
ディズニー/ピクサー、ドリームワークス・アニメーション、イルミネーション・スタジオ…。
もう一社。ライカ。
『コララインとボタンの魔女』『パラノーマン』『KUBO/クボ』…良質作を次々発表。
そして、また一つ。
神話や伝説上の生き物の研究者である英国人探検家のライオネル卿。
彼の夢は、探検家憧れの“貴族クラブ”の一員になり、自分の偉業や名声を残す事。
が、いつも証明には至らず、人使いの荒らさから助手は辞めていき…。
そんな彼の元へ、一通の手紙が届く。差出人は不明だが、次のターゲットは決まった。
ビッグフット!
“生きた化石”。人類進化の謎“ミッシング・リンク”を解く鍵となる!
いざ、冒険へ!
そしてやって来た米国山奥。
長~い長~い旅の末(これからの展開上敢えて省略)、遂に遂に遂に!
ビッグフットと遭遇!
しかも何と! 人語(英語)を話す。たどたどしくじゃなく、流暢に。性格は超フレンドリーで、お喋り。
さらに何と! 手紙を送ったのは自分だという。
何でも新聞でライオネルの事を知り、ある頼みがあるという。
この山奥でたった独りぼっちの“彼”。仲間に会いたいという。
仲間とは、イエティ。仲間がいる場所。それは…
遥か遠くのヒマラヤ。さらにそこの伝説の谷“シャングリラ”。
ライオネルは自身の夢の為、彼こと名付けられた“Mr.リンク”は仲間に会う為、目的は違えど、ここから本当の本当の大冒険へ、いざ!
実は見る前までは、単純に“ビッグフットを探せ!”だと思っていた。
でも実際は、“ビッグフットと共にイエティを探せ!”。
よくある仲間を探す冒険物だけど、よくよく考えると、ユニークな一捻り。
やはり楽しいのは、ライオネルとMr.リンクのやり取り。
片や洗練された英国紳士、片やおっちょこちょいなお茶目キャラ。
凸凹コンビのコミカルな化学反応が自然と生まれる。
声を吹き込んだヒュー・ジャックマンとザック・ガリフィアナキスの掛け合いも絶品。そのまま実写でも出来るくらい。(勿論その時ザックはパフォーマンス・キャプチャーで)
アドベンチャー物にヒロインは付き物。
ライオネルの元恋人で、アデリーナ。
貴婦人だが、気が強く、ひょんな事から冒険に同行。ライオネルとの恋を再び匂わせつつも、それ以上にライオネルとMr.リンクの関係に何より助言する。
アドベンチャー物に悪役は必要不可欠。
クラブのボス、ダンスビー卿。
そもそもライオネルの目的は、このダンスビー卿に一矢報いたいから。
進化論肯定派のライオネルに対し、進化論否定派のダンスビー。言わば卿にとっては、“ミッシング・リンク”やビッグフットの存在など絶対断じてあってはならい!
珍獣殺しのステンクを雇い、命を狙う…。この男が何処までも追い掛けてくるしつこさ。
ライカと言えば、ストップモーション・アニメ。ストップモーション・アニメと言えば、ライカ。
今回は従来のコマ撮り手法に、3DプリンターやCGを融合。
そのハイブリットを見よ!
各キャラの表情一つ、動き一つ。滑らかでもあり、ストップモーション・アニメらしいカクカクさも感じる。
圧巻のアクション・シーン。酒場での乱闘、嵐に見舞われ壁が下になる船内での逃走&格闘、クライマックスの“ぶらぶら”は手に汗握るほど。
これらをストップモーションを軸に製作したかと思うと、やっぱりライカって凄い!!
映像美は言うまでもなく。
特に、遂に辿り着いたシャングリラ。
しかし、それとは真逆のように…。
地球半周の大冒険を経て、ヒマラヤに入り、ニワトリについて触れてはならない現地の老婆から話を聞き、シャングリラへ。
吹雪の雪山の中で、遂に出会えた。
仲間…いや、家族と。
が!
氷の地でずっと暮らしているせいか、彼らの心は冷たかった。
Mr.リンクを家族どころか仲間としても認めようともしなかった。
“人間”ライオネルたちにも辛辣な言葉。
我々を探すのは、自分たちの欲の為。
あながち間違ってはいないからこそ、痛い。
彼らは冷たい穴の底に“自然保護”。
目的を果たせず、肩を落とすライオネル。
ここでも自分の事ばかり。
あなたの欲はクラブの連中と一緒。一番悲しんでいるのは誰?
同じ仲間から見放される。まるで人間社会みたい。
そんな時、手を差し伸べるのは…。
何だっていい。例えば、我々が落ち込んでいる時、犬や猫が傍に居るだけで励ましになってくれる。
種族を超えた友情。
悲しむビッグフットに、人間が手を差し伸ばす。
また同時にそれは、自分勝手だったライオネルがMr.リンクとの友情を通じて本当に大切なものに気付く。
ライオネルとMr.リンクに次第に友情が芽生えていく様がいい。
序盤はMr.リンクをただの自分の夢の為の“もの”にしか見ていなかった。
最初に距離が縮まったのは、船上での会話。ライオネルが名付けてくれた“Mr.リンク”もいいが、自分で自分の名前を付けたい。
付けた名前は、“スーザン”!
苦笑いのライオネルだが、こういうちょっとした微笑ましいエピソードがラストに重なる。
家族と家を見付ける事が出来なかったスーザン。
でもそれって、時には“場所”じゃない。
地球半周の大冒険。探し求めて探し求めて、ライオネルもスーザンも見つけ出したのだ。
批評家からは絶賛されたものの、興行的には惨敗したという本作。
もっとファミリー向けかと思ったら、シビアなテーマもあり、ちょい大人向けかも。人が死ぬシーンもあるし。
それらがネックになったのかは分からないけど…、でも個人的には、
ワクワクのアドベンチャー物、アクションやユーモアもたっぷり、しっかりとしたテーマや王道メッセージが込められ、技術も素晴らしい。
非常に面白かった!
さらに願わくば、ライカ初の続編として、ライオネル&スーザンの新たな冒険も見たいなぁ…。