「習作みたい」サマーフィーリング 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
習作みたい
前日に観た「アマンダと僕」がとてもいい出来栄えだったので、同じ監督の本作品はかなり期待して観た。同じような喪失と再生の物語だが、こちらは小さな子供を背負い込むこともなく、時事問題を絡ませることもない。
突然の病死で恋人を失った男が主人公だが、死んだ恋人の描き方が薄くて、主人公の恋人に対する精神的あるいは経済的な依存度がどれほどだったのかがよく解らず、観客は主人公の喪失感を共有できない。そこが残念な点である。
恋人の家族はみんないい人で、他人である主人公に気を遣う。それがまたつらい。事後の処理はすべてやってくれるから、主人公の出番はなく、気を紛らすこともできない。結局何も変わらないまま住んでいる場所だけが変わり、次の夏を迎える。その夏も無為に過ぎて、更に次の夏を迎える。その間に少しずつ変わっていく気持ちを描いた作品である。
原題の「Ce sentiment de l'ete」は作品にふさわしい日本語にするのが難しいから英訳の「サマーフィーリング」を邦題にしてしまったのだろうが、映画を見る限りフランス語の「Sentiment」は「フィーリング」よりも「感傷」に近い気がする。
雰囲気だけの映画だが、同じ監督が同じテーマで制作した「アマンダと僕」が傑作だったので、本作品は所謂習作のような位置づけでいいと思う。感動は薄かったが、それなりの才能を感じる作品ではあった。
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