「掘り下げがまるで足りていない」るろうに剣心 最終章 The Final JohnJetDogさんの映画レビュー(感想・評価)
掘り下げがまるで足りていない
今作を観るにあたって、だいぶ忘れていた原作を最初から最後まで一気に読みました。
その直後に観たからというのもあるかも知れませんが、原作と比べると掘り下げが足りなさ過ぎてガッカリしました。
最終章が二部作だと知って、当初は『あぁ、薫のあのシーンで第一部を終えるのね。引きの絶望感としては最高だし、剣心が廃人になってるというというのも二部目のスタートとしては最高。』と思っていたのですが、実際はあのシーンは採用されず、ただ薫が誘拐されて最終戦へ。
雪代縁の目的は剣心から大切なものを全て奪い去って生き地獄を味あわせる事であり、生きる意味すら失うほどの絶望を味あわせずして復讐は完遂しなかったはず。
なのに薫のあのシーンがないので、縁の目的が全く伝わって来ない。
あれでは剣心をおびき寄せて殺す為にしか見えず、縁の復讐はそんな簡単な事ではないんだよとツッコミを禁じ得ない。
また、薫のあのシーン不採用という事は、剣心が闇堕ちする描写も無いという事で、原作最大のテーマである『数々の人を殺めた人間が、死以外の贖罪を背負ってどう生きて行くのか』という部分がまるで抜け落ちてしまっている。
そこを描かずして終幕を迎えてしまった為、最後の幸せな風景に対する感慨深さがまるでなく、剣心と薫のこれからを祈る気持ちにまるでなれない。
剣心が死ぬほど苦しみ抜いて自力で答えを導き出す描写がないから、ラストで剣心が薫の側に居続けている事に疑問が湧いてしまう。
剣心の性格であれば、自問自答を乗り越え答えを出した後でなければ、これ以上同じような事が起こらないようにまた流浪の旅に出てしまう方が自然だ。(実際原作ではそうしようとしていた。)
あそこの改変で、るろうに剣心全体に通じる最も重要なテーマを丸投げしてしまった事になり、残念で仕方がない。
四乃森蒼紫の扱いも酷い。
原作では蒼紫、斉藤、佐之助、そして剣心の4人がライバルであり友であり、物語の中核を担う存在であるはずなのに、蒼紫は大した活躍もなく、ザコを仕留め切れなかった上に爆発でドロップアウト。
生死すら分からずに物語が終わるという扱いの酷さ。
中の人がやらかしたから急遽ストーリーを変えたのかなとすら思ってしまった。
原作にはない瀬田宗次郎の登場も、本来はあそこは蒼紫の場面だったはずのところを撮り直して差し替えたのでは?とすら邪推してしまった。
佐之助に関しても、前作の志々雄真実編で二重の極みを会得させて貰えなかったせいで、ただ威勢が良いだけのお荷物ザコキャラポジションに成り下がってしまった。
原作では剣心が誰よりもなによりも信頼を置く人物だったはずが、悲しくて仕方ない。
また、原作の方のるろうに剣心は、もう一人の主人公、明神弥彦の成長物語でもある。
現に、原作は逆刃刀を受け継いだ弥彦が立派な剣士になったところで終幕となっている。(北海道編は別)
ところが実写映画版のるろうに剣心では弥彦はただ居候している子供というだけで、居なくても物語が成立するレベル。
今作も、ただの一度も闘う事なく終わってしまった。
同じく、恵も居ても居なくても良いキャラに成り下がってしまった。
薫の恋敵として時に背中を押し、時に鼓舞し、最後は全てを薫に託して去っていくカッコいい女性のはずが、あれではただの手当の得意な居候。
彼女の覚悟の上に薫と剣心の幸せがあるからこそ、その特別さと重さが増す話しだったはずなのに、全てが台無しに。
尺の問題があるから鯨波や無名異をきちんと掘り下げられなかったり、劇場版1作目で出してしまったから外印を出せなかったり、そういうのは仕方がないとしても、メインのキャラクターはもうちょっとしかっりと掘り下げて、ストーリーに説得力を持たせて欲しかった。
そのくせ逆に要らなくない?って思う張がやけに目立っていたりと、よく分からない演出が目立って非常に残念だった。
最後は大団円で終わったはずなのに、剣心と薫以外のその後には一切触れる事がなく、それも不満が残る。
もしかしたらThe Biginningの方でそこを描くのかもだけれど、縁との決着が今作で着いた後で後日談的に描かれても感動が半減してしまう。
The Biginningで散々巴との愛の生活を掘り下げて見せられた後で薫との今を見せられて、素直に喜べるのだろうか。
個人的は、もう一作増やして最終章三部作にしてでも、縁編は丁寧に描いて欲しかった。
だいたい原作では志々雄真実編と雪代縁編はほぼ同じ長さなのに、雪代縁編だけ一作に収めようとするのがそもそも無茶だったのではと思う。
長々と批判ばかり書いてしまい申し訳ありませんでした。
るろうに剣心をリアルタイムで読んでいた頃は剣客バトル漫画くらいにしか思っていなかったのが、大人になって読み返したらとても奥が深く、生きる事の意味と真っ向から向き合う重厚な漫画であった事を再認識したばかりだったので、余計に細かい部分が気になってガッカリしてしまいました。
これは原作を読んだ直後だから思う事で、内容を忘れかけている人や剣心シリーズを映画でしか知らない人はまた違った感想を抱くのかも知れません。
この駄文、長文にお付き合い頂いた方がもしいらっしゃいましたら、心よりお礼を申し上げます。
めちゃめちゃ共感。ってかレビューの表現が上手で全然駄文とは思わないですよー
剣心以外のキャラの活躍の無さが残念。心情の変化とかも薄くて
良かった点もあるが物足りなさ過ぎて全体的に悪い印象になってしまった
剣心が死ぬほど苦しみ抜いて自力で答えを導き出す描写がないから、ラストで剣心が薫の側に居続けている事に疑問が湧いてしまう。←強く同感です。
原作で山場であるこのシーンが一切無いためにるろうに剣心の奥深さを伝えられていないことが非常に残念で悲しくなりました。
次作に期待するしかないですね💦
ですよね。
主人公は剣心(佐藤健)なのでそこまで弥彦に尺は取れないのは分かりますが、せめてもう少し活躍の場を与えても良いのでは?と思いました。
ラストも剣心と薫の会話のみで、自問自答の末に剣心が見つけたものが何なのかまるで分からないし、薫もどこまで受け入れてるのか分からないし、他の人達はどうなったの??って感じです。
後編でどう巻き返すのかに期待です。
凄く共感します。
私も「るろうに剣心」は弥彦の成長物語という側面をなくしては成り立たないと思ういます。本当に大切なテーマをまるっと無いものにしてしまっているのは非常に残念です。
キャラクターの掘り下げを疎かにして(役者に丸投げして)闘いばかり派手にするやり方、これが本当に「るろうに剣心」なのかな?と思ってしまいました…(長々すみません💦)