あのこは貴族のレビュー・感想・評価
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みんなの憧れで作られていく、幻の東京
映画「あのこは貴族」(岨手由貴子監督)から。
映画なのに「章」分けされていて、ちょっと違和感。
せっかくだから「章」ごとの気になる一言をピックアップ。
■一章 東京(とりわけその中心の、とある階層)
「東京って棲み分けされてるから。
違う階層の人とは出会わないようになっているんだよ」
■二章 外部(ある地方都市と、女子の運命)
「あんな馬鹿が今や土建屋の3代目だよ」
「えっ・・」「田舎って闇、深すぎ」
■三章 邂逅
「日本って、女を分離する価値観がまかり通っているじゃないですか。
おばさんや独身女性を笑ったり、ママ友怖いって煽ったり、
女同士で対するように仕向けられるでしょ。
私、そういうの嫌なんです。本当は女同士が叩き合ったり、
自尊心をすり減らす必要ないんじゃないですか」
■四章 結婚
「でも家にいたら、旦那さん嫌がらない?」
「うち、子供ができるまで、
しょっちゅう『ちょっと働けば?』って言われてた」
「周りに奥さん遊ばせてるって思われたくないんだよ」
「でも、しっかり働くのは嫌なんでしょ?」
「そうそうそう、家のことできる程度に働けってことなんだよね」
■五章 彷徨
(東京タワー観ながら)「こういう景色初めて見ました。
ずっと東京で生きてきたのに」
「みんな決まった場所で生きてるから。
うちの地元だって町から出ないで、
親の人生トレースしてる人ばっかりだよ。
そっちの世界とうちの地元ってなんか似てるね」
■「一章から五章まで」書き出してみたけど、選んだのは、
ラストシーンでの会話のワンフレーズ。
「田舎から出てくるとさ、こういうわかりやすい
東京っぽい場所ってやっぱり楽しいよね。
外から来た人がイメージする東京だけどねぇ。
そう、みんなの憧れで作られていく、幻の東京」
東京の人たちの生活って、私たちにはわからないことばかりだな。
身に染みる一本
貴族でも庶民でも人間である
貴族の生活ってどんな感じだろうって、一種の金持ちYouTuberの生活を覗き見したい様な気持ちを抱き鑑賞。
全然違った… そんな豪遊シーンは無し。
たしかに階級が違う感は伝わる描写は満載だが、そこにいる人物と自分に壁がある印象を受けない。居るよなこういう人。あるよねこういう場面。
とても感情移入しやすい人物の描き方。
どちらかといえば水原希子側に属している方が圧倒的に多いはずなのに、ここまで支持を集めるんだから凄い映画だなと思う。
なぜなら主役は貴族側だから。
金持ちの描き方でここまで親近感や共感を得れる映画は無かったなぁ。
ニケツしてるチャリに向かって手を振る門脇麦の顔が忘れられない。
良い日も悪い日も平等に訪れる。
いい作品だった。
静かな空気感の中にある境界
女性の境遇を繊細に上品に逞しく描く
2021年劇場(配信)鑑賞51本目 秀作 66点
ずっと気になっていた作品。
わたくしが女性ではないのでより深く共感できなかったり、些細なジャンルの問題で個人的には特別評価が高くはないですが、本当は全然もっと評価高いです。
これは恋愛映画ではなく人間ドラマで、わたくしが一番好きな生きづらい立場の人間がもがく人間ドラマなのですが、なんか少しだけハマらなかった。
主要キャラクター4人それぞれとても良かった、特に門脇麦でチワワちゃんくらいしか彼女の作品も見てこなかったし、その作品が聞き手に回るあまりキャラクターが出ずらい役なので、裏腹に今作で印象がガラッと変わった。
まず声がこんなに可愛らしい人で、表情や所作よりももっと内側から出ているような上品さを持った人だとは。
高良健吾は最初から最後までイメージを崩さない役でそれをちゃんと演じていて良かったし、水原希子が今作においていい味を出していると思った。
周りがいいとこ育ちなとこもあって、それ故一層普通さが顕著に垣間見れて今作の評価に大きく影響したと思う。
高良健吾が門脇麦の婚約者とわかってから、潔く関係を切った点や擦れてきたんだけど、本質というか根っこがちゃんとあって、普通という正義を忘れずに備わっていた彼女のキャラクターとても良かったです。
是非。
意外性のある結末
睡眠導入にはぴったり
冒頭のタクシー運転手の描き方は職業差別である
日本で女性映画を作りたい。
志は立派です。
ただステレオタイプはいけません。
おそらくは無関心だからこんな描き方になったのでしょう。
冒頭タクシー運転手が女性に嫌味を言う。その不可解さ。全部が"あえて"の発言に見えてしまう。言いたいことありきというか。映画である必然性がないんですよね。思想書でもブログでもTwitterでもできそうなことを映画でやろうとしている。
タクシー運転手ならこういうこと言うよね、をあるあるとして使ってしまう浅ましさ。
この点を指摘しないのは、それがあなたの生きる世界でそれが当たり前とされているからです。
この映画を絶賛する、ということはこの日本という国で当たり前とされている価値観に取り込まれていると考えた方がいいと思います。
男性に対する偏見も酷いです。
男性を悪く描けば女性が持ち上げられるわけではありません。
女性を称賛する映画は素晴らしいと思います。
ただこの映画に出てくる女性には主体性が感じられません。
ただただ男性の気色悪さを強調します。
これでは説得力が皆無です。
皆思想性が現代的、"ちょうどいい"と思ってそうに思う。それではダメなのだ。
価値観を破壊しなければ傑作にはならない。
きっと冒頭のタクシー運転手のシーンも、女子高生が手を振るシーンも、自転車で街を走るシーンも脚本がよくて物語の中で意味をもち明確に機能すれば素晴らしいシーンになったのかも。脚本を重視する私のようなタイプの映画好きはイライラすると思う。
全体的に女性を無理して称賛しようとして男性を下げたところ女性も一緒に下がってしまったように見えた。とにかくがっかりした。観てて元気がなくなった。いかにも"日本的な"女性映画なのだ。すべてが枠の中で、村社会的でそれぞれの集団が分断されている。そうではないものを私は観たい。このような社会は現実でも嫌でも直面する。改めて映画の中で確認する蓋然性を見出せない。中立的な立場を強調するが、言い換えれば日和見主義者である。何も変化しない。嘘でも良いから変化して欲しいですよね。現実は変化しないのだから。
これを絶賛されてるのを見るのもうんざりなのだ。だから社会は、良くならないんだよな、とひとりごちてしまう。悲しい現実の反映。
違う階層同じ東京
映画の中の台詞で言うと、
全く交じり合う事のない世界の話だけど、
違う階層でも階層ごとに息苦しさがあって、
金持ちは金持ちでまたしんどい生活なのだなと
妙に近く感じた。
門脇麦さんの演技が素晴らしかったと思う、
世間を知らない箱入り娘を体現してて、
とてもか弱く心配になるほどだった。
対称となる水原希子さんもまた素晴らしく、
力強くとても美しい女性だった。
バラエティーなどで観る彼女に少し苦手意識があったけど、
良い演技で可愛らしく見えて女優さんって、
色んな顔があるんだなと感心しました。
苦手だったはずなのに水原希子さんと僕もニケツしてぇと
思ってるほどでした。
関係のない話と一蹴してしまいそうな題材だけど、
章が区切られてて、
彼女たち2人のキャラと生い立ち環境を見せて、
2人が出会い、お互いの道を行き、結末に向かう、
起承転結がはっきりしてて見やすかった。
楽になりたいがために、すぐ金持ちの子に生まれてたらなぁ
と弱音を吐くけど、これを見てたら今が1番気楽で良いやと
思えました。
貴族感は無いし、貧富の差も微妙❓‼️いい感じの女性の友情‼️❓
貴族の中の貴族
代々医院を営む裕福な家庭の華子の人生の選択を、秋篠宮家の眞子内親王の生きざまと重ねてしまうのは私だけだろうか。ただし、華子の場合、眞子内親王のように日本のトップクラスの家柄から「降嫁」することとは逆に、自分の家柄よりもハイクラスに属する男性との結婚により、ますます自身の人生への疑問が深まっていくのであるが。
彼女が美紀の部屋を訪れた時に、この部屋のものはすべて美紀さんのものなのだというセリフが頭に残った。自分の稼いだ金で借りた部屋、買った生活雑貨。これらに囲まれた美紀の生活こそ、自分自身の人生を生きている者の生活なのだと嘆息している華子は強い決心をする。
きっと眞子内親王も同じような思いでこれまでの人生を歩んできたのではないだろうか。すべてが税によって賄われる人生。それはまぎれもなく特権であり、その裏返しに義務も伴ってくる。そのことを窮屈に思われたのか、物足りなく思われたのか、それは我々が知る由もない。ただ、学生時代に出会った、決して恵まれた家庭に生まれたとは言えない同級生が進もうとするその先に、希望の光を見出し、その人生を共に歩もうとされたのだろう。
誹謗中傷、無理解、批判は言うに及ばず、罵詈雑言、人格否定など、ひとかどの報道機関ですらそこへ加わる異常なバッシングに耐え、志を貫かれた内親王殿下(このようにお呼びすることもあとわずかであるが)を私は心から尊敬する。
実家の経済的な支援などほとんどない小室圭氏が、アメリカ留学の資金を工面し、大学を卒業、現地の法律事務所への就職も内定するということも、なみの日本人男性にはなかなか実現できることではない。全国民に注視されるプレッシャーの中で目的を達成した彼も、すごい青年ではないか。
眞子さまのご両親にはぜひお嬢さんのことを誇りに思って頂きたい。いや、内心そのように思われているのではなかろうか、あっぱれよくやった、と。ただ、お立場上、表に出せないだけなのではなかろうか。
本日、まさに我が国の正真正銘の貴族たる秋篠宮家の眞子内親王の結婚が正式に発表された。日本の社会に何の未練もなく米国へ行ってしまわれるのかも知れないが、このように思う市井の存在があることもぜひ知っておいてもらいたいものだ。
映画の話に戻ろう。
独身にもどり、イベントの仕事をする華子が、元夫の孤独をいちばん理解しているということがよく伝わってくるラストだった。彼女は階段の下から元夫を見上げている。しかし、門脇麦の演技は、この人物が、見上げている相手を羨んだり、尊敬したりはしておらず、温かく労わるように見つめていることをしっかりと観客に伝えている。
俳優と演技指導者に喝さい。
想像を超えて面白かったです😊
「上流階級」と、まあまあの「お家柄」と、その他一般の世界が微妙に混じり合いながら話しが進んでいきます。
たぶん殆どの方は「その他一般」に属しているのだと思いますが、映画の冒頭は見事に「上流階級」と「まあまあのお家柄」の日常を突き付けてきます!
キャストが最高で、役者陣が上手でした!
「上流階級」に高良健吾、まあまあの「お家柄」に門脇麦、「その他一般」に水原希子なのですが、各々がまぁ見事に演じています。そして、門脇麦には石橋静香、水原希子には山下リオという、素晴らしい友人(シスターフッド!)が存在してくれていることが、何とも映画に良い味付けをしてくれています。
そして「上流階級」の高良健吾演じる、慶應幼稚舎→東大大学院→弁護士という絵にかいたようなスーパーエリートですが、「上流階級」の「ムラ」ならではの何とも言えない背負った苦しみがあり考えさせられました。
僕がお気に入りだったのは、水原希子と山下リオの関係性。地方出身者が東京で生き抜くための、なんとも逞しいサバイバーとして描かれていますが、地方出身者にもそれなりの「ムラ」があり、それはそれで背負っているものがあります。
そして「あのこ」を演じた門脇麦の前半と後半の演技。素晴らしかったです。人によっては金持ち描写に不快感があるかもしれませんが、結構おすすめの作品でした。
女性二人が出逢った化学反応
あのお爺ちゃん恐ろしかった。。。
ああいう政治家の家系っていうのにリアリティを感じた。戦前から続いている財閥出身のおうちなんだろうなあと。
あの影にはいろんな悪事があったんだろうなあと想像する余白が楽しかった。あの爺さん、二号さんとか三号さんとかいたんだろうなあと。
個人的にはきっこさんの方に近いので、きっこさんたちの成功を応援したい。
自転車が自由の象徴として扱われているのには拍手したい。
車連中よりよっぽどかっこいいんだと自信になった。
すごかった
主人公が当たり前のようにタクシー移動することや、結婚をするにしても全く恋をしないことに、なんだこいつと思う。主人公の空っぽぶりがすごくて、いけ好かない映画を見たなと思ったのだけど、後から思い返すとだんだんすごいものを見たような気になってくる。
当たり前のようにタクシーに乗ったり、高そうな服を着ていることなどなんの説明もなく、当たり前のように描かれ、現実も当たり前にそのような暮らしぶりの人が存在し、身分に合わせて恋愛などせず、主人公のように離婚しないまま年老いて死んでいく人がいることが垣間見えるような気がする。映画では描かれなかった立場での責任感などもあるのだろう。そういったものを省いて描いて堂々としているのもすごい。
恋愛映画のような体なのに、誰も恋愛をしていない。映画では最後の最後、主人公に高良健吾が未練たっぷりな感じで幸福な未来を感じさせる。高橋ひとみが怖い。
静かな良作。
静かな作品ながらずっと不思議な緊張感があり、特に主演2人からは目が離せず、ずっと惹き込まれて観た。
私たちは、あらゆるところで私たちを取り巻く見えない「格差」と、「こうあるべき」「こうあらねば」といった「呪い」の中を生きている。
生まれや家柄。学歴や経歴、収入。
既婚か未婚か。結婚相手の学歴や収入。
子どもがいるかいないか。
年齢やライフステージに合わせて変わっていく周囲からの勝手な期待や常識を押し付けられながら。
でも本作で美紀が言っていたように、誰もが自分の置かれた世界の中で最高の日があったり、ままならなくて打ちひしがれたりする日があったりする。
宇垣美里さんの言葉を借りるなら「私には私の地獄がある」だ。
観終わった時は女性の「呪い」がリアルでホラーだったなあと思ったけど、でもよく考えたらこれって女性に限らないよなあ。
本作では幸一郎がおそらく本人の望んだ形ではない人生を生きていたけれど、男性も同じなんだろうな。
とはいえ作中の逸子の言葉は印象的だった。
私たち女って敵対関係になるようになってるじゃないですか(おおよそこんな意味だったと記憶)。って言葉。
この逸子の言葉へのアンサーとして、男性とか家庭とかそういうものから解放されたら、個人としての女性同士ってうまく笑い合えるんじゃないだろうか、ということを本作は見せてくれてたような気がする。
ラストの華子と逸子や、美紀と里英のように。
美紀たちから見たら、レストランで4500円のお茶を当然のように飲んでいた「あのこは貴族」なんだろうし、生活水準の違いではわかり合えないかもしれない。
でも気持ちはある部分ではちゃんと通じ合えるんじゃないだろうか。
ベランダでアイスを食べながら話していた時の、華子と美紀のように。
この映画の彼女たちを見た今、物事や誰かの一面を切り取って簡単に相手に対して線引きをしないニュートラルさはちゃんと持っていたいなと思う。
ストーリー以外の部分では、本作は東京の風景が綺麗で哀しくてでも優しくて素敵だった。
あと富山出身としては、美紀の地元が出た時は「魚津(富山県)だー!」とテンション上がったけど、あの田舎の寂しくてガサツな感じも、「アピタ行く?」のセリフも、なんというとてもわかってしまって少し切なかった(苦笑)。
あと門脇麦ちゃんと水原希子ちゃんは、前情報見た時は「役柄のイメージ逆じゃない?」と思ったけど、ピタリとハマっていたし、2人ともとても良かった。
東京
ガールズ映画?と思っての食わず嫌いはもったいない
原作者山内マリコさんはトークイベントで”インターネットは自分と同等または見下ろす文化”といったニュアンスの発言をしていたそうだ。
決して自分より上の階層にはアクセスできず、その実態はわからない。
貴族の生活を覗き見する好奇心もあって映画館に足を運んだ。
なるほど、現代の貴族はこういう生活をしていて、こういうプレッシャーがあるのかと。
ただ、そんなこと以上に群像劇として心地よい余韻の残る映画だった。
水原希子さんはモデルの印象ばかりだったが、門脇麦さんに負けない俳優として存在感があった。
雨男という独白で単なるイヤな奴でなく描かれる高良健吾さんも何か丁度いい。
果たしてラストシーンでの天気はどうだったか。
オヤジからしてみるとポスタービジュアルで損をしてしまっていないか心配になる。
ガールズ映画だと思っての食わず嫌いであればもったいない。
前を向いて歩いて行こうと思わせてくれる映画だった。
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