「あちらで手を振るのは誰か」あのこは貴族 前世は焼き鳥屋さんの映画レビュー(感想・評価)
あちらで手を振るのは誰か
映画を観ながら、“ママ友”とか“女の敵は女”とかいう言葉に泥々した何かを無意識に期待してしまう自分に気付いてゾッとした。〝女性同士の醜い争い”を期待するのは実はいつだって男側(男社会)で、たぶんそれは結束されるのが怖いからで、この映画は男が期待する女性同士の分断を踏み台にむしろそれを軽やかに裏切り、分断への抵抗と連帯を静かに描いてみせる。エンパシーに満ちた語り(特に石橋静河のセリフ!)が素晴らしかった。
原作は未読だが、映画ならではのショットに込めた意味も興味深かった。特に終盤、門脇麦が道路越しの2人に手を振るシーン。相手側は遠くて見えないけど(おそらく女子高生)、それは誰か分からないようにした気がする。原作の文章では、女子高生とか明示されていたのかもしれない。でもこの映画はあえてそこをぼかすことで、門脇麦と、2ケツした水原希子とその友達とが映画の時制を越えて邂逅したように思えたからだ。それは「出会う筈の無い人々が同一フレームに収められた瞬間」であり、まさに映画にしか描けない表現だった。
画像はタイトルカットだけど、終盤同じような画角で門脇麦が映されるのにも注目。この監督、ひとつひとつのショットに意識的で、映画してるなぁ…。
女性だけでなくむしろ、男性こそ見るべき映画です。役者陣も素晴らしいっす。
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