劇場公開日 2019年8月16日

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「こわしたい」イソップの思うツボ KinAさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0こわしたい

2019年8月25日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

地味で報われない大学生活を送る「亀」こと亀田美羽、タレント家族でキラキラした大学生活を送る「うさぎ」こと兎草早織、父親と共に復讐代行の仕事を続ける「犬」こと戌井小柚。
ウサギと亀と犬、三人の女子とその周りが引き起こす、とある事件。

一見バラバラに見える人物や突拍子もなく思えるエピソード達が連なり、だんだん全貌が見えてくるつくりは面白い。
しかし圧倒的に中途半端だし、意外性や種明かしを重視しすぎて中身がスッカラカンな印象にしかならなかったのがかなり残念だった。

誰にも共感はできないし、誰かを応援する気にもなれない。
事の顛末が判明したところで「だから何だ」感が強いのはいただけない。
動機はありきたりでいまいち納得性に欠けるし、裏で操るモノもありきたりで古臭い。

展開が読めてしまったとしても一番の真相に惹かれれば強いのに、肝心の説明パートが緩くてグダグダなので入り込めなかった。
過去にあった忌み事の判明はもっと力を入れて欲しかった。
そこ一番重要でしょ。それが無ければこの映画は無かったでしょ。

強引で明らかに無理目な設定はご愛嬌で良いんだけれども。
現実感のないエピソードの連続も突き抜けていれば楽しめるはずなのに、勢いも熱量も不足して感じた。
ヌルいコメディの空気の中に、突然本気で気持ち悪いシーンが入ってくるのは好き。
オエ~ッとなれる良いアクセントだった。しかし本当に気持ち悪かったな。

存在感の薄い美羽が名前を呼ばれるシーンが好き。
「えっ?」と聞き返しちゃうのかわいい。
自分の高校時代を少しだけ思い出した。接点のない人に名前覚えてもらってると嬉しいよね。
もしかしたら良い関係になれたかもしれないのに。
仄かな切なさすら感じる最後の視線に、今までゲンナリしていた心が少し上昇した。

しかし「犬」の存在感の無さにはがっかり。
一番現実離れしてパンチの効いた人達だったのに、蓋を開けてみたらオロオロするばかり。
せっかくの紅甘がもったいない。
もっと活用して欲しかった。ただの便利屋じゃない。
ウサギとカメの童話も特に落とし込めてない。

後味の悪さや胸糞悪さを楽しめるほどブラックに振り切れてはなく、スッキリできるほど上手くもない。
からくり仕掛けのある映画はとても好きなので、中身や勢いがもっとあればなと思ってしまう。全体的にもったいない。
これだったら普通に大学生活の人間関係や悲喜交々の方が興味あった。

KinA