「上田監督は、日本のM・ナイト・シャマラン」イソップの思うツボ 逆さクラゲの飼育員さんの映画レビュー(感想・評価)
上田監督は、日本のM・ナイト・シャマラン
あの「カメラを止めるな!」のスタッフの共同監督作品という事で気になっていたので初日に鑑賞してきました。
感想としては、非常にスカッとする気持ちのイイ映画でした。劇場で見て良かったです。
特に良かったのは、出演してる俳優さん達の演技がどの方も素晴らしかった点です。主演の三人の少女役の石川瑠華さん、井桁弘恵さん、紅甘さんは、境遇の異なる少女役をそれぞれ魅力的に演じられていましたし、脇を固める役者さん達もキャスティングがバッチリハマっていて、これはカメ止めチームの力が活きているなと感じました。個人的にツボだったのは、亀田家の方々がかもし出す何とも言えない「亀感」です。「亀感」って何だと言われても説明に困るのですが、あの佇まいはウサギでも犬でもなく間違いなく「亀」でした。
あと、個人的に戌井小柚役の紅甘さんの存在感と演技にヤラれました。「カメラを止めるな!」の時のSEのおばちゃんの自然体な演技に通じる物を感じました。何気なく発するセリフの威力ったらないです。最高です。
役者さん以外にも脚本、演出面でも楽しめました。
少しネタバレも含みますが、前半恋愛パートで、美羽の恋心が芽生える時に食卓に飾られている一輪の花。憧れの教師を隠し撮りする行為。それらが180度意味が変わって裏の顔が見える瞬間は、とてもスリリングでした。
「カメラを止めるな!」の衝撃を期待していると物足りなさを感じるかもしれませんが、非常に丁寧に演出されていて、上手いなぁと唸らされます。
ただ、この映画には非常に大きな問題があります。
これがなかったらもっと楽しめたのになぁーと思う点があります。
それは、自分自身が「カメラを止めるな!」の衝撃を忘れられず、それを期待し過ぎてしまっている事です。そこばかり気になって、この映画の良さが上映中、中々頭に入ってきませんでした。
「いつあの衝撃が来るんだろ!早く!早く!プリーズ!」と頭の中で期待していると、映画がいつの間にか終わってしまいます。
自分自身が非常に勿体ない見方をしていたなぁと観賞後に後悔しました。
あのシーンが良かったなぁとか、あの俳優さんの演技が良かったなぁとか後々冷静になって良かったところを思い返せるんですが、鑑賞中はその事で頭が一杯でした。
もっと見るところがあるだろ、自分よっ!(反省)
この感覚、昔どこかで体験した事あるなぁと思ったのですが「シックスセンス」を見た後の「アンブレイカブル」でした。
「シックスセンス」の衝撃を期待して見に行ったら、期待していた物と全然違うものを出されてガッカリしたのですが、しかし、後年見返してこの作品独自の面白さに気付きました。しかも今では、M・ナイト・シャマランの映画が大好物になるまでになっています。
この「イソップの思うツボ」も、もう一度冷静な頭で見てみたいと感じました。まだまだ、色んな魅力がある作品だと思います。
少し荒削りな部分もある作品なので、そこが気に入らない人もいるかもしれませんが、個人的には印象に残るイイ映画でした。
個人的には上田慎一郎監督は、出世作の境遇や物語途中の作品の裏の顔があらわになる演出スタイル含めて、日本のシャマラン監督だと思ってるので、これからも新作が出たら劇場に見に行こうと思います。