「「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展の予習として好適」クリムト エゴン・シーレとウィーン黄金時代 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展の予習として好適
クリムトとシーレの個々の作品を堪能したいと言う目的で観ると肩すかしでしょう
クリムトと邦題に大書きされていますが、内容はどちらかというとサブタイトルの「エゴン・シーレとウィーン黄金時代」です
クリムトも取り上げられていますから間違いではないのですが、どちらかといえばエゴン・シーレに方に比重がいっています
原題は「クリムトとシーレ エロスとサイコ」です
本作の目的はクリムトやシーレの作品を通底するエロスとサイコの意味性、そしてその背景となるウィーンのその時代を描くものだからです
邦題のサブタイトルにあるウィーン黄金時代というのは、1897年のウィーン分離派の旗揚げから、1918年の第一次世界大戦の終結、クリムトとエゴン・シーレの死までの期間を指しています
この時代、ウィーンというオーストリアハンガリー二重帝国のコスモポリタン的な近代都市が絶頂から大戦を経て没落した期間でありました
ですから「ウィーン黄金時代」とは、都市としての黄金時代ではなくウィーン分離派を中心とした芸術やフロイトの精神分析を始めとする学術が花開いた時代であるとの意味です
本作の中である人物がこの時代のウィーンを圧力鍋に例えていました
圧力鍋のなかに最先端の学問と芸術を入れて圧をかけたとき、吹き出た蒸気がクリムトやシーレ、フロイトであると
クリムトとシーレの絵画に深く関連している退廃と死は、フロイトのエロスとタナトスの理論と密接に関連していることをテーマとしています
2019年開催の「クリムト展 ウィーンと日本 1900」ではクリムトのスケッチも多数展示されてはいましたが、本作でほぼ春画のようなものを見ることによって彼のエロスの源泉がようやく腑に落ちて理解することができました
当時のエロ写真との関連性も新鮮な視点で勉強になりました
またそのクリムト展でも少数ながらシーレの作品も展示されておりますが、その意味の理解にも多いに役つ内容だと感じました
「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」展が近く巡回開催されます
その予習としても最適の映画であると思います