「意外と見どころたくさん❗️なのに〝残念な〟映画❓」ペット・セメタリー 琥珀さんの映画レビュー(感想・評価)
意外と見どころたくさん❗️なのに〝残念な〟映画❓
実は、一家4人とジョン・リスゴーさん以外の人物たちは殆ど顔を覚えていません。そして、タイトルにペットがつくというのに、動物は死体の犬1匹と一家の飼い猫一匹しか出てきません。『動物への虐待にあたるような行為はしていません』という断り書きがなくても問題ないくらい動物をイジってません。お面の使い方が効果的で、化け物ペットがわんさかいたように我々の恐怖心を巧みに煽るのです。
誕生パーティーやお葬式の場面でも誰一人印象に残るような人はいないし、文字に起こせるような会話もなく見事に気配を消し去って描いてます。
気配らしきものといえば、終始流れ続ける不気味な重低音のいかにもホラーな音楽と奥深い森からの〝瘴気〟(王蟲の森と違い、肺ではなく精神を破壊します)のみ。
ドントブリーズやクワイエットプレイスと同様、客席にいる殆どの人が聴覚とゾワゾワ感(くるぞくるぞ、というあの独特の感覚)を研ぎ澄ませ、緊張感に包まれます。
どうです?
結構ちゃんとした正統派ホラーとしてそこそこきちんと作られている気がしませんか?
主人公はボストンのERでの激務でいくつもの死と向き合ってきたからか、死後の世界を信じない現実派。
一方、妻は時間では解消できない姉の死についての悔恨から、天国や死後の世界という観念的な概念を信じることによって救われようとしている。この死生観の違いが後々、娘の死について受け入れるかどうかの姿勢の違いに繋がってくる。
なかなか深くて決して人ごとではないテーマをさり気なく入れ込んでます。
現実的な人だからこそ、〝自分の目で見た〟超常現象をあっさり受け入れ、見境なく活用することまでしてしまう。
観念世界に対する想像力の欠如が、霊魂やそちら側の世界に対する尊厳や畏敬の気持ちを抱かせず、倫理観の境界まで超えさせてしまったのだと思います。
そして最後のオチ。
家族会員でゾンビハンターだったっけ⁉️
と勘違いしそうな颯爽とした雰囲気の横並びの行進。
あの中にエマ・ストーンとウディ・ハレルソンがいても違和感なくねー❗️と一瞬血迷うほど、私には笑いのツボでした。エリー一家の意気込みが凄くて、あのペースでの〝増産〟が続き、〝◯◯再生工場〟がフル稼働する事態になったら、あの沼の〝生産力〟が追いつかないのではないか、と心配になる程でした。
これだけお楽しみ要素が盛り沢山で、最初から最後まで不穏な緊張感で満たされているのに、なぜか高評価が多数となることはなさそうな、傑作になり損なった〝残念な〟ホラー映画ということになるのでしょうか。