THE QUAKE ザ・クエイクのレビュー・感想・評価
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地球上に生きているということ
大変に怖かった。とにかく怖かった。人智を超えた圧倒的な力の前に、生身の人間のなんと無力なことか。 地球の内部でマントル対流が起きていて、マントルの上に乗っている地殻は必然的に対流に引っ張られて動き、複数の地殻の相互関係で地震が起きるというメカニズムについては聞いたり読んだりした。そしてメカニズムが分かっても個別の地震がいつどこで起きるのかは予測できないということも、あちらこちらで見聞きした。 「天災は忘れた頃にやってくる」という寺田寅彦の言葉はあまりにも有名である。被害に遭って次の被害に備えているうちは次の天災は発生せず、被害を忘れて用心を怠っているときに限って発生することが多く、結果として被害を甚大にしてしまう。 被害を大きくする原因には正常性バイアスもある。自分だけは大丈夫と思ってしまう心理、あるいは起きていることが大したことではないと見くびってしまう心理のことだ。災害時には悪者扱いされる正常性バイアスだが、日常生活で簡単にパニックに陥ったりしないためのブレーキの役目を果たしていると思う。例えば猫が何かに驚いて道路に飛び出して自動車に轢かれる例はよくあるが、人間では滅多に起きない。正常性バイアスは日常生活に必要な心理なのである。 しかし災害時には逃げ遅れや判断ミスの原因となる。東日本大震災で避難先を間違えた教師たちがそのミスと見苦しい弁解を責められていたが、もし自分が彼らの立場にあったとしてら、生徒たちを正しく安全な場所に誘導できたかどうか。教師たちの行為が意図的であったなら責められて然るべきだが、正常性バイアスが働いたミスならば、必要以上に非難されるべきではない。 さて本作品はノルウェーの首都オスロを舞台に、人々が巨大地震に遭遇する映画である。文明の象徴みたいな巨大なビルも、地震のエネルギーにはマッチ箱みたいに潰れてしまう。動物はいち早く察知して逃げ出すが、彼らの逃げる先に安全がある訳ではない。 家族を描き人間を描いてはいるが、本作品はヒューマンドラマではない。寧ろ自然災害を前にした人間の無力さを強調し、創造と破壊を繰り返す地球の、あるいは宇宙の不条理をあぶり出す。 恐ろしい場面の連続は、蜘蛛の糸よりも頼りない生命の糸の、あまりの細さに気づくことに由来する。死は日常的に我々の前に口を開いて待っている。今日、何を選択するか。今、何を選択するか。人が地球上で生きているということはどういうことなのか、改めて深く考えさせられる作品であった。
蘇る記憶
ディザスターパニック「THE WAVE ザ・ウェイブ」の続編。今度は都市を襲う巨大地震の中で生き残るため奔走する人々の姿を描いた作品。 東日本大震災被災者の私にとっては、この2本の作品は当時を思い出して悲しくなる作品ですが、多くの方に「津波」「高層ビル内での震災」とは、こういう物であると知ってもらえる貴重な作品でした。 前半から震えが止まらないほど緊張して観ていましたが、作品として現実を忠実に再現している秀作と思いました。
勇気と努力と決断力
「THE WAVEザ・ウェイブ」で岩山崩落によりガイランゲルが津波に襲われた3年後、元同僚で友人のコンラッドがトンネル崩落事故で死んだことを切っ掛けにクリスチャンが個人的に調査に乗り出す話。 タイトル通り今度は地震。 そういえば前作を劇場で鑑賞してから丁度3年。 津波の後、被害者への責任や自分に出来ることを勝手に背負い家族と距離を置く主人公。からのわかりやすい地震煽りとやる気のない超保守的調査会社に、クリスチャンを信用しない登場人物達。 それが起こるまでかなり引っ張られたし、収束がかなり駆け足だったけど、余計な胸アツエピソードラッシュもなく、テンポが良くてやっぱりディザスタームービーは面白いと感じさせてくれた。
ロック調とは違った調べのディザスター
派手な宣伝もなく単映館で細々と上映されているこの種の映画が気になる人はレビューがどうであれ観るのでしょう。引き留めません。 公開初日からネタバレ書くのも野暮ですから漠然とした印象で悪しからず。 前作からの引きずりと北欧の風土から来るものでしょうか、例えるなら冒頭からグリーグの組曲『ペール・ギュント』の「オーゼの死」を思わせる重々しく暗い旋律の曲が想起されます。 「カルフォルニアダウン」のような予算もCGもないですが十分恐怖は描けています、これは監督が20年余り撮影監督で磨いてきた実力のなせる業だと思えます。加えて主役はドウェイン・ジョンソン程のタフガイではないのである種頼りないほどのリアリティがあります。ディザスタームービーをパニックエンターテインメントではなく現実として描いて見せようとする製作陣の姿勢、これはこれでありでしょう。ただノルウェーの地震リスクはサンアンドレアス断層ほど知名度がないので予測に至る展開がいまいちピンと来ませんでした。あとで調べてみたらノルウェーでは氷河期に地中に押し込められた沈殿物が粘土状の地質を作り出しており、氷河が溶け出したことでこの粘土状の地質が浮上している。これによりノルウェーは毎年国土が 1cm 程度上昇している。このような国土の浮上も地震の要因の一つと考えられているとのことでした。
迫力はあるけれど。
話が回収しきれてなくブチ切れ感が否めないラスト。危機一髪でいきなりこれかよ、と。一番見せ場の地震のシーンもほぼ予告編で出し尽くし。それでもやっぱりスクリーンで見る迫力は違うけどね。
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