フリーソロのレビュー・感想・評価
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直線的な人生とその快楽
一般的な幸福とは違うところに喜びを見出す者はいる。一般的な幸福では全く満足出来ない特異な人種でもある。彼らは死を常に眼前にして、その先にある途方も無い快楽に酔い痴れる。恋愛が足を引っ張ることになる事実が、もはや一般的には理解されないだろう。アレックスがMRIに入って自分の脳ミソの状態を医者に説明されているシーンには思わず笑ってしまった。普通の刺激では物足りないという診断結果。医者のお墨付きを得た変わり者だということだ。しかし、アレックスの人生はとてもシンプルだ。垂直に切り立った花崗岩の壁に登る。それだけ。行動する詩人でもある。生きる意味も理由も別に大したことではない。自分を満足させられるかどうかだけなのだ。アレックスこそ、死ぬまで生きる直線的な人生をとても分かりやすくした人間でもある。
あらゆる感情は主人公のまっすぐな気持ちから生まれたもの
スタートレックV
カリフォルニア州ヨセミテ国立公園のエル・キャピタン。冒頭から緊迫感あふれる映像で圧倒されるのですが、ちょっと待てよ、どうも既視感が・・・と、思い出そうとすると、「あ、スタートレックだ」と気づいたのですが、シリーズ三作目か五作目のどちらだったかが思い出せなくて、鑑賞中ずっと気になっていました。
結局はネットで調べてみて、ようやく『スタートレックV』だったことがわかりました。ラジー賞もとったこの映画は内容が思い出せないのに、冒頭でのカーク船長が休暇中にエル・キャピタンの岸壁アタックする映像が凄かったことだけ覚えてるのです。フリーソロと同じく命がけで岩を登るカーク。そこへ円盤みたいなモノに乗って空中を浮かび上がるミスタースポックの姿が現れ、「休暇をお楽しみ中のところすみません。緊急事態です」・・・と、こんな展開だった気がする。他の方もスポックに言及してるので、チェックしてみると、あれ・・・アレックス自身がスポックに似てたのか!という衝撃をも受けました。もう頭は混乱です。MRI検査しなきゃ・・・です。
さて、ボルダリングも東京2020オリンピックで正式種目となったことですし、岩登りはまさしくスポーツであることの証明。かつての映画『クリフハンガー』がなんて、いかに作り物感が溢れる作品なんだとも理解できます。「人間はいつだって死ぬ可能性があるんだ」などと冷徹なまでの発言の裏には、仲間を何十人と失ってる背景があってのこと。MRIでの異常なまでに前頭葉が反応しないことから、多分、死神を味方につけてしまったんだろうとも感じてしまいます。
中盤は彼の死生観とか恋愛観とか、冷めた言葉を聞かされ、人生何が楽しんだろう?とも思ってしまいますが、この辺りで眠気が襲ってきました。あ、落ちる、落ちる、落ちた~と、数秒寝てしまいました。さすがにクライマックスシーンは目を見開いてましたが、一番凄かったのはカメラマンも宙吊りになって撮影してる!ということでした。ドローンにしときましょうよ・・・怖っ!
こんな登山予想外すぎて!!!!!
リアル映像の迫力
ミスター・スポック
高さ975m断崖絶壁であるエル・キャピタンのドーン・ウォールを、ロープ・道具を使わず単独で登るクライマー「アレックス・オノルド」の挑戦(2017年)を描いたアカデミー長編ドキュメンタリー賞受賞作。
映画の大半は、入念に準備をしていく様子に割かれており、2015年にドーン・ウォールをフリー化したパタゴニア・アンバサダーのトミー・コールドウェルも登場する。
いくらルートを徹底的に予習しても、急な体調変化やちょっとした失敗は起こりうるので、命綱なしで死んだクライマーも多い。慎重にコトを進めるアレックスにしても、彼女ができてから練習中に2回も事故したりして、妙な流れも…
「メルー」のジミー・チン監督作ということで期待していたのですが、山や自然に興味がある方ならぜひ観て欲しい名作でした。
なぜ、フリーソロをするのかという理由について、MRI検査の結果で興味深い現象も確認できるのだが、母親の影響も伺えて、親子関係というのは大切だなぁと改めて思うのでした。
腹式呼吸と自重筋トレ、神の業
数メートルの落下で、圧迫骨折数ヵ所、足首の捻挫、これは、少々出張り過ぎのGFが原因らしいが、彼も、やはりそれなりに怪我をしている。生身の人、なのだな。しかし、日々の体の鍛え方、そしてフリーソロに備えた、万端の準備の仕方も、もはや超人だ。全てにおいて、強靭な精神力がぶれない。ロープで登りながらコースを確認、住居でもある車内に座しての、完璧なまでのイメージトレーニングときて、あぁ、テクニックも同じ、ボルダリングの長いやつ、だ。と、今さら気がつくものの。千メートルに近い高さだと、覚える手足順は幾つだろう?撮影中のカメラクルーに、完登間際に出会うと、アレックスは、Hi guys! と微笑む。息が全く上がっていない。おぉ、神業の、究極の腹式呼吸!それにしても、彼の目が、あまりにも遠くを、彼岸を見つめている気がして、不安を覚えてしまう。ま、こちらは凡人であるからして、やむを得ないのだが。
本当にすごい。
ドキドキ((o(´。›ω‹。`)o))ハラハラ
笑顔が怖くなる
キューーーーっとなるレベルを超えてた。
高所恐怖症です。でも、こいつは質が違う。眺めが余りにも現実離れし過ぎていて、ビビるだの縮み上がるだのの範疇を飛び越してます。
クライマーは恐怖心と戦い、乗り越えようとしている人達なんでしょうか?
神経ホルモンの話。ある化学物質について、その物質が生成する前の段階の物質のことを「前駆体」と言います。「闘争か逃走か (fight-or-flight)のホルモン」や「生存本能ホルモン」と呼ばれ、興奮状態になると分泌される「アドレナリン」の前駆体は「ノルアドレナリン」。その前駆体は「ドーパミン」。「ドーパミン」は「快の感情」をつかさどる脳内麻薬の代表。
本来なら「アドレナリン」が分泌されるべき場面で、その前駆体である「ドーパミン」で生成が止まり、分泌されてるんじゃないのかと思ったりしたけれど。
入念な準備と鍛錬で成功の確信を持って、不可能と思われる壁に挑戦する人達。参りました。
ドキュメンタリーの泣かせ役、サンニの明るさに思う。「女って強いよなぁ」。彼女の愛の半分は、アレックスへの母性に見えた。
挑戦もほどほどにして欲しい。サンニのためにも。無理なんでしょうね、多分。死ぬなよ。
ついでに車オタしとくと。
アレックスの愛車は、Dodge Ram Van Camper Conversion。年式不明。前席は、おそらく合皮のRECAROに換装されていました。新車で6万ドルくらいの車ですね、今なら。日本じゃでか過ぎて、乗る気は起きんけど。
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