「一つの事件により家族がその愛情ゆえに傷つき、そしてまた緩やかに一つになる」ひとよ ぽんぱるさんの映画レビュー(感想・評価)
一つの事件により家族がその愛情ゆえに傷つき、そしてまた緩やかに一つになる
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今までの白石監督の映画が好きで、いつもの世界観を求めて観ると肩透かしを食らった感があるヒューマンドラマ。
母が父を殺してしまった夜もただの一夜の話と言ってしまえばそれまでだが、親族にとってはそんな一言では済まされず、ずっとその一夜に縛られ、翻弄されて生きていかなければならない。
事件前は父親の家庭内暴力により結束していた母と子供たちが、それぞれに傷ついた心を抱えながら生き、再会することにより葛藤が生まれ、緩やかにまた一つになっていく。
堂下はというと、彼は息子と楽しく過ごした一夜を胸に堅気として生きていこうとしたけど、自分がずっと過ごしてきた世界からは抜けさせて貰えず、大切な息子までその支配下に置かれてしまい、荒れてしまう。
稲村家の方は、母の万引きや堂下の暴走等で何となくまた一つになることができたけど、堂下親子の方はというと、暴走した夜が最後で八方塞がりの状態からその後どうなったかが一切描かれていないのでモヤモヤが残る。
出来ることなら、白石監督の今後の作品中のサイドストーリー的に触れてもらえるとありがたい。
音尾琢真(珍しく良い人役で好演)や大悟、MEGUMIといったバイプレーヤーが良い味を出していて効いているし、ちょっとした一言が胸に刺さることが多かった。
家族というものについて深く考えさせられる内容で、お色気シーン(万引きではなく(笑))が無ければ高校生の息子と一緒に観ることができたのになぁ、とも思った。
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