劇場公開日 2021年1月22日

  • 予告編を見る

「【深読みしてみた】」どん底作家の人生に幸あれ! ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【深読みしてみた】

2021年1月24日
iPhoneアプリから投稿

「デイヴィッド・コッパーフィールド」は、ディケンズのよく知られた自伝的小説なのだから、この無理矢理感のある日本語タイトルは少し変な気がする。
現代タイトルの訳の方がいいんじゃないかと…。

ディケンズは、19世紀当時から人気作家ではあった。
しかし、生前は通俗的と言われて、決して文壇から高い評価を得ていたわけではない。

この映画に描かれている小説の発表会の場面の聴衆が妙に少なかったのは、それを表しているのではないかと思う。

今名声を博している文豪も、批判的な目で見られていたのだ。

映画はイアヌッチ監督作で、「スターリンの葬送狂騒曲」が、スターリン亡き後のソ連の権力闘争を皮肉たっぷりに描いていたのに対して、この作品は、「デイヴィッド・コッパーフィールド」を題材に取りながら、今の僕達の世界を、そして、これを観ている僕達を皮肉っているように思えてならない。

初めは、バラバラの人種で構成された血縁関係を見て、エンタメ界のうわべで差別を嫌いながらも、潜在的に白人が主流であり続けているところを嘲笑っているのかとも考えた。

しけし、考えれば考えるほど、これは、今の僕達の世界そのものではないか。

デイヴィッドの周りで、後先考えない人々。

今の世界で考えると、
差別を排除する高尚な試み。
しかし、残る差別。

今や名高いディケンズも、当時は苦労を重ねた通俗小説家。
その自伝的小説。
ディケンズだと思って観に来る人々。
それは、自分自身とは異なる他者の評価。
文豪の権威のイメージとは、かけ離れた映画の演出。

イアヌッチは、この映画を通して、嘲笑っているのだ。

邦題タイトルでマイナス0.5ね。

ワンコ