9人の翻訳家 囚われたベストセラーのレビュー・感想・評価
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文学への愛と良質なミステリー
凄く面白かった。
本当に2ヶ月間も翻訳家を缶詰めにしていた実話があるというのも驚くが、その他にいくつもの印象的なエピソードを織り交ぜて、文学を商業主義の道具にした男を、混み入ったトリックでじわじわと追い詰めていく迫力。缶詰めにされた人間の心理劇と最後に表出する愛。仇討ち。
映像はキューブリックみがあって美しく緊迫感に満ちており、リオ五輪で椎名林檎のパフォーマンスを担当した日本人作曲家の音楽も貢献していると思った。
『失われた時間』をみせてくれ…
観逃したことをふと思い出したので鑑賞。
物語を愛する人々の反抗、好きですね〜。
「軟禁される必要はなかった」というレビューを見かけて悲しくなりました。彼が救いたかったのは、金儲けの道具と化した文学ですよね。そのために家畜のように軟禁し、制限された方法で翻訳させるという行為は文学への冒涜です。
確かに、タネ明かしの後出し感は否めません。ミステリーとしてはあまり良いものとは言えません。しかし、ミステリーの対処を犯行時に置き換えた時、この物語に説得力が増しませんか?お金のために集まった翻訳家たち、でも各々の胸中には確かな愛がある。そしてオスカルは、文学を救った。身代金は金ではなく文学だった。
ここで気になるのが金の亡者と化した社長。彼の過去をぜひ掘り下げて欲しかったですね。なぜ、人を殺してまで金を手に入れたいほど執着するのか、?あまりに異常すぎます。おじいさんも、はじめは彼を信頼していたからアレックスの本を託したはずです。このままではアレックスとおじいさんが可哀想。そしてカテリーナの過去についても言及して欲しかった。上映時間が短いので、もっと長くできたはずです。ふしぎ。
なにはともあれ、多言語での銃撃阻止シーンがとにかくかっこいい。あそこだけで人生3回分は得した。
翻訳家が監禁されるという設定だけでドキドキ
この映画については、ネタバレは決して読まずに、できたら予備情報も何も知らないまま気軽に観ることをおすすめします。
世界的にヒットを遂げた『デダリュス』の完結編が、さまざまな言語で同時に翻訳されることが決定。アングストローム出版の社長が情報漏洩を怖れ、各国から9人の翻訳家を集めて地下空間に監禁。インターネット禁止で携帯電話など外部と連絡が取れるようなツールなどは、翻訳家たちからすべて没収されたというのに、『デダリュス』の冒頭10Pがネットに流出してしまい、そこから犯人捜しがスタート。
ミステリーの謎解きとしても、もちろん楽しいのですが、フランスの豪邸屋敷の地下に個性あふれる9人の翻訳家たちが閉じ込められるというシチュエーションだけで、わくわくしてしまいました。フランス語を中心として、さまざまな言語が飛び交い、快い知的な興奮を感じました。(英語はちょびっと単語を知っているだけで、他の言語は何をいってるかほとんどわからないけれど〜) 『デダリュス』作中のレベッカを意識して白いドレスをまとったオルガ・キュリレンコが美しい。スキンヘッドにタトゥーの黒い革ジャンのおねえさんもかっこよかった。1人で作業がしたいとごねるギリシャ語担当の年老いた翻訳家にも優しかったし。
金と地位に執着した俗物社長 対 文学に深く傾倒した小説を愛する者との闘いか?
登場人物が多い中、これだけのミステリーを2時間以内にまとめてあるのがすごいです。すべてのキャラクターを掘り下げることは難しいけれど、しゃれた群像劇でもあると思います。
動画サイトでのレンタルで観たのですが、いいところで、サイトの不具合なのか固まってしまい中断。(T_T)残念 それゆえ、★印は3.5になりました。
<備忘録>
英 語…アレックス・グッドマン(アレックス・ロウザー)
スペイン語…ハビエル・カサル(エドゥアルド・ノリエガ)
ポルトガル語…テルマ・アルヴェス(マリア・レイチ)
イタリア語…ダリオ・ファレッリ(リッカルド・スカマルチョ)
ギリシャ語…コンスタンティノス・ケドリノス(マノリス・マヴロマタキス)
デンマーク語…エレーヌ・トゥクセン(シセ・バベット・クヌッセン)
ドイツ語…イングリット・コルベル(アンナ・マリア・シュトルム)
ロシア語…カテリーナ・アニシノバ(オルガ・キュリレンコ)
中国語…チェン・ヤオ(フレデリック・チョー)
出版社社長…エリック・アングストローム(ランベール・ウィルソン)
エリックの秘書…ローズマリー・ウエクス(サラ・ジロドー)
書店店主…ジョルジュ・フォンティーヌ(パトリック・ボーショー)
ミスミスミスリード
最初は面白いんだけど・・・
好きと嫌いが同居する作品
007を引っ張るよね
クリエイターのプライド
『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』と同じテーマで、非常に楽しめました。『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』では、テストをパスする頭脳とお金を交換していましたが、今作はクリエィティブで成功した人間が、クリエィティブを侮辱するまでに成り下がる話でした。
私は、音楽、絵、映画、小説等を創作する人をとても尊敬しているので、今作に込められた作家の想いが良く分かりました。今の世の中、お金に換算できないことも無理やりお金にしてしまい、そのことが称賛される風潮があります。
映画であれば、適当に作った作品を宣伝で動員する。現代アートであれば、芸術家よりもディーラーの方が儲かる。今作のテーマは、映画が好きな方なら共感できる部分も多いのではないでしょうか。
クリエイターのプライドと怒りを感じられた作品でした。
面白かったけど、無駄に複雑にし過ぎでは?
上映当時から気になっていたのですが、地元の映画館では上映されていなかったため、レンタルが開始されたこのタイミングでの鑑賞です。
予告映像などは事前に視聴していたので、おおまかなストーリーは知っている状態での鑑賞でした。
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世界的に爆発的なヒットを記録している小説「デダリュス」。シリーズの完結編が全世界同時発売されるにあたって、出版社社長のアングストロームは情報漏洩を避けるために各国の翻訳家を通信の途絶された人里離れた洋館の地下室に隔離して翻訳させるという方法を思いついた。9人の翻訳家が集められ、1日に20ページの原稿を渡される形で翻訳作業が進められていたが、ある日アングストロームの元に「ネット上に小説冒頭10ページを公開した。24時間以内に500万ユーロ払わなければ更に100ページを公開する」という脅迫メールが届き、事態は一変するのであった。
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犯人は通信の途絶された密閉空間である洋館の地下から、どのようにして小説を外部に持ち出したのか。犯人は誰なのか。
ジャンルはミステリー映画ですね。序盤は「誰が犯人か」という感じにストーリーが進むのですが、中盤くらいで普通に犯人が判明するので、後半からは犯人がどのように犯行に及んだか、何故そのような犯行を行ったのか、そして犯人と強欲な出版社社長であるアングストロームとの対決が描かれ、最後には衝撃の大どんでん返しが待ち受けています。
作風はものすごく私好みです。実話をモチーフにした「翻訳家の隔離」というシチュエーションも良いですし、各国の翻訳家たちが個性豊かで知的で魅力的ですし、「どんでん返し」が大好物な私はラストの衝撃的な展開も結構好きでした。
しかしながら、結構文句をつけたい部分も多いです。特に演出面とストーリー面。
中盤以降、「実は犯人はこういうことやってました」とか、「犯人の過去にこういうことがありました」という過去の回想シーンが何度も登場するのですが、そのシーンがあまりにも唐突すぎるのです。多くの映画では、過去の回想シーンを表現するときに「画面の色調を変える」「画面端のピントがぼやける」「登場人物の声に軽いエフェクトをかける」「回想シーンに入る前にカットインを入れる」などなど、すぐに「ここは回想シーンですよ」と分かり易いようにする演出を見掛けますが、この映画にはそのような演出は一切無く、あまりに唐突なタイミングで回想シーンに突入します。そのためちゃんと観ていても回想シーンに入っていることに気がつかず、後になって「あ、これ回想なんだ」と気付くことが多かったです。映画後半は時系列が行ったり来たりでごちゃごちゃになるので、回想シーンは何かしらの演出を入れて欲しかったと思います。
また、ストーリー面も、後半はどんでん返しがいくつかあり「実はこうでした」「実はこうでした」という展開の繰り返しになるので無駄に複雑なストーリーになってしまっていたように感じます(これは私の読解力も問題あると思いますが)。昔観た「ピエロがお前を嘲笑う」という映画のレビューでも確か同じことを言った気がしますが、どんでん返しが何度もあると無駄に話が複雑になるし驚きもだんだん薄れてくるので、一つの「大どんでん返し」をぶつけてくれた方が面白かったように思います。
最後の不満点として、犯人の目的やら動機やら犯行の手段が全て分かった後でもイマイチ腑に落ちない部分が多いことが挙げられます。「ここまでやる必要はなかったんじゃないか」「あの行動は何の意味があったのだろうか」「この登場人物の行動はオーバー過ぎやしないか」等々、ミステリー作品を観終わった時に感じるスッキリとした「納得感」がこの作品は薄いように感じます。「登場人物たちの言動が物語を作る」のではなく、「登場人物たちが物語を作るために動かされている」ように感じてしまったのです。何だか消化不良に感じてしまって、そこがちょっと残念でした。
上記のような不満点もありつつ、しかしミステリーとしては非常にクオリティの高い作品でしたので、ミステリー好きの方には是非見て欲しい作品です。オススメです!
緊張感が、、
もう少しあってもいいのかな?
もっと監禁されてる感じとか、やっぱりどうやって流出してしまったか感が欲しかったかな?
展開は読めちゃうのと、言葉が難しくて覚えられないからどこで出てきたワードかわからない笑
テンポは好きですよ!
恐らく再読には堪えられないミステリー。そして何よりやってはいけないことをやってしまった作品。
①一回目は結構面白く観られると思う。密室で展開されるミステリーかと思ったら、途中から展開が二転三転して鼻面を引き回されるし、私も○○が犯人と思っていたら、もう一捻りあって、且つ最後はあっと驚くどんでん返しあり。②しかし、冷静にプロットを振り返ると、かなり?な部分が多い。真犯人があの事トリックを仕掛けるのに翻訳家仲間を引き入れる意味がないし、先ずはあのトリックの意味がわからない。一人でも出来たのに何故?それに、復讐したい気持ちは判るが、あれほど周到に計画を立てられるのであれば、翻訳家達が巻き込まれるリスクも予見出来た筈。少し手前勝手過ぎるとの批判は避けられないだろう。③登場人物の何人かは単に謎めかすためだけのキャラだし。アンドストロームは本を売るためなら何でもする奴にしてあるが(あれは何でも行き過ぎだろう、「ダヴィンチ・コード」シリーズが本当にあんなか方法で翻訳されているとしたら大問題だ)、、この映画も面白くするために意味のないキャラや無理目のサイドストーリーを盛り込んだという謗りは免れないであろう。④ただ、ここまでであれば★3つくらい付けても良かったのだが、作中で某有名ミステリーの犯人をばらしてしまった。ミステリーファンにとっては赦せない暴挙である。故に★1つだけ。
想像と違った
合計11ヶ国語が飛び交う痛快マルチリンガルミステリー
世界的のベストセラーとなったミステリー小説『デダリュス』、世界中のミステリーファンが待つ三部作の完結編『死にたくなかった男』の出版を高らかと宣言したオーナーのアングストローム。違法コピーの流出を恐れる彼は厳格な管理体制で英語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、ギリシャ語、デンマーク語、スウェーデン語、ロシア語、中国語それぞれの言語翻訳を行うべく9人の翻訳家がフランス郊外の洋館に召集する。外部との接触を一切断たれ洋館から一歩も出られない厳重警備の中毎日20 ページずつ配付される原稿の翻訳が淡々と進められていたある日の夜、アングストロームのもとに一通のメールが届く。そこには「冒頭の10ページをネット公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ次の100ページを公開する。もしも要求を拒めば全ページを公開する」という脅迫だった。小説の内容を知っているのは正体が一切明かされない謎の作者オスカル・ブラックとアングストローム、そして9人の翻訳家達だけ。翻訳作業は中断されアングストロームは9人のうちの誰かの犯行と睨み犯人探しを始めるが・・・というマルチリンガル密室ミステリー。
オルガ・キュリレンコ、ランベール・ウィルソン他ワールドワイドなキャストを取り揃えて作品の風格を整えつつ、密室での丁々発止の駆け引き、事件後と思しきカットや回送シーンなどを交えて時制をかき乱しながら物語を進行、随所に文学トリビアを振りまきながらサスペンスを加速させていく演出センスが実にスタイリッシュ。フランス語を中心に10 ヶ国語がバンバン飛び交うドラマを日本語字幕で追うとサスペンスはさらに複雑になるわけですが、そんなのは表層だけの話で、アガサ・クリスティの1篇を読了したような爽快感がしっかり用意されています。これだけのキャラクターを立体的に描こうとすれば長尺になりそうですが、端折るべきところを思い切って端折ってドラマのリズムを尊重した結果ソリッドな仕上がりになっています。なにぶん登場人物が多いわけですが、個人的にはB級アクションと地味な文芸作品を活動の軸にしている稀有な女優、オルガ・キュリレンコが見せるさらに円熟味を増した優雅な演技が印象的でした。本作でフランス語も流暢であることを示した彼女は実際何ヶ国語喋れるのかが気になります。ひとことで言うと翻訳家版『グランド・イリュージョン』ですが、あそこまでの後出しジャンケン連発ではないというところが肝でしょうか。終始冷たい質感の映像も美しく見応えのある作品です。
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