「ぼくらの7日間戦争も、SPゲスト登場の前に、負け戦」ぼくらの7日間戦争 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
ぼくらの7日間戦争も、SPゲスト登場の前に、負け戦
1988年の実写版はリアルタイムで観た人には、宮沢りえのフレッシュな魅力と共に忘れ難い名作。
残念ながら自分はいつぞやビデオか何かで一度見たきりで、たくさん見た映画の中の一つという印象。原作小説も未読。
なので、比較や先入観無く、一本のアニメーション映画として鑑賞。
とは言え、実写版と今作の違いを。
舞台が2020年の北海道に。
主人公たちも中学生から高校生に。
立て籠る廃工場に不法滞在のタイ人の子供が新たに登場。
実写版で立て籠る理由は大人たちの抑え込み従わせるような厳しい躾への反抗だったが、今作では、歴史本ばかり読んでる守が、議員の父親の都合で引っ越す事になった片思い相手の幼馴染みの綾の希望で、17歳の誕生日までの7日間だけ廃工事で大人たちに秘密のキャンプを始める。
この変更点、良かった点もあればビミョーだった点も。
舞台の変更は全然いい。が…
タイ人の子供の登場はどういう意図…? 良くも悪くも青春ムービーなのに、謎の社会派要素…?
子供と大人の境界が曖昧な高校生。子供vs大人がテーマの一つなのに、何かこうバランスが悪い。
シンプルだった実写版の戦争理由。今作では綾の父親の傲慢ぶりはマジでムカつくが、主人公たちの言動も今一つ説得力に欠ける。って言うか、結構ワガママで自分勝手。
さらに、彼らが行う“戦争”は犯罪レベル。下手すりゃ怪我どころか命の危険も。
守と幼馴染みの綾、綾と親友の香織以外、ほとんど接点の無かった6人が集って…。
一応友情が育まれていく様は描かれるが、ちと薄い。
守と綾、恋愛がもっと色濃く絡むのかと思ったら、綾の想い人は意外な相手。
タイ人の子供の為に抗っているのか。
綾の為に抗っているのか。
偉そうな大人に対し、子供の譲れないものの為に抗っているのか。
全て引っ括めてなのか、それとも主軸ブレブレなのか。
SNSで彼らの抱える心の傷や痛みがさらけ出されるのは現代的。
自分を偽る事が正しい大人への道なのか。
自分を偽らず、本当の自分を告白。
亀裂が入った6人に、友情が再び。
このシーンは悪くなく、ランタン飛ばしなど、映像も美しい。
そこまで酷い!…って訳ではない。が…
既視感のある作風や内容。
音楽や主題歌など、某メガヒットアニメの影響特大。
何だか製作陣は、新たな魅力の『ぼくらの7日間戦争』を生み出すというより、某メガヒットアニメの二匹三匹目のドジョウの為に『ぼくらの7日間戦争』を題材にしたような気が…。
で、結局それも徒労に。
何故なら、ラストに登場した超サプライズSPゲストが全てをかっさらって行ってしまった。