「韓国ノワールにしびれた」毒戦 BELIEVER kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
韓国ノワールにしびれた
いきなりの爆破シーンには驚かされた。何よ、これ。映画製作の本気度を訴えてくる。オープニングと終盤に登場する雪深い山奥の一本道も哀愁を帯びていて心地よいのですが、韓国にもこんな場所あるのか?と考えていたら、エンドクレジットにはノルウェー何とかと書かれていた。これも本気度の一つだな。
悪の親玉を捕まえたところで、次なる親玉が生まれてくるのは世の道理。悪を生み出す根源たる世の中を変えなきゃダメなのだ。しかし、刑事魂としては“イ先生”を捕まえなきゃ収まらないもの。結末を見る前にそんなことを考えてしまいます。
麻薬王を取り巻く犯罪は単に中毒者を作るだけではなく、残虐な殺人という犯罪が常に付きまとう。映画の中でも手首を斬られた聾唖兄妹、目玉ジュースを飲まされたウォノ刑事、腕を斬られた狂人幹部、目を覆いたくなるくらいの残酷描写が繰り返される。潜入捜査で中国マフィアのハリム(遺作となった故キム・ジュヒョク)とのやり取りも緊張感漂うし、もう一つの爆破もおぞましい。また、ドラッグ本来の怖さもウォノが実演でやってのけるのだ。
誰がイ先生なのかは途中から気にならなくなった。ある程度想像もできるという理由以外に、イ先生がいなくても恐ろしい世界を体感できるからだ。正体が知られてないことをいいことに、イ先生に成りすます悪人が多い(計9人)ので、もしかしたらイ先生はいい先生なのでは?などとも感じるほどでした。
雪山の中の一軒家。犬の名前を呼ぶウォノ刑事。因縁のある二人が対峙して、まるで親友であるかのように静かに言葉を交わす。一転して屋外の引きの映像、そして銃声。聾唖の二人には聞こえたのだろうか・・・どちらが撃ったにせよ、心に寒々しいしこりを残してくれるのだ。このエンディングだけでも評価が上がる。