劇場公開日 2019年7月19日

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「教訓に満ちた『ポラロイド』のススメ」ポラロイド ケンシンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0教訓に満ちた『ポラロイド』のススメ

2019年7月23日
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鑑賞方法:映画館

怖い

知的

ホラーは、夏の風物詩。
今年は長雨のため、今のところなりを潜めている蒸し暑い日本の夏も、まもなくやってきそうな気配。そんな、むせ返る灼熱の季節にピッタリな『ポラロイド』の魅力に触れてみましょう。

写真を撮る。
日常に潜む恐怖を描いた本作に、ぼくが見出したもの。それは、「恐怖や不安」といった、「ぼくたちの歩みを妨げるもの」に対する「向き合い方」でした。
ただ怖いだけじゃなく、教訓に満ちているなんて…お得すぎます。

どんなジャンルにしろ、「主人公の葛藤と成長」が描かれている映画がぼくは好きですし、良い作品だと思います。もちろんぼくの観方がすべてだとは思ってませんが、個人的尺度から見ると、本作は間違いなく良い映画です。

本作の主人公バード(キャサリン・プレスコット)はカメラが趣味の女子高生。とある過去の出来事に対して後悔を抱いており、「自分に自信を持てず、なにごとにも受け身で積極性に欠ける」性格です。

1972年にポラロイド社が発表し、アンディー・ウォーホルなど名だたる写真家に愛用された、希少価値の高いヴィンテージカメラ"SX-70"をバードが入手したことにより事件は幕を開けます。

カメラ好きがそんなレアなアイテムをゲットしたら、撮らずにはいられるはずがありませんよね。そこに、「撮られたら最期」という設定が盛り込まれているわけですから、事件の予感しかありません。

案の定、ポラロイドに収まった彼女の友人たちは、次々と悲劇に襲われます。
自分のせいで、人が亡くなってしまう…。
知らなかったこととはいえ、彼女は「苦悩し葛藤」します。そして、「自らの意思で行動」を起こし、少しずつ真相へと近づいていくわけです。

そんな風にして、「受け身だった少女」が、「悩みながら」も行動し、「自らの意思で」困難に立ち向かっていく様子がしっかりと描かれています。

また、ストーリーを展開するツールにデジタルではなくアナログカメラを用いた点もすばらしかった。
「ある一瞬を記録する」という点では両者とも同じでも、アナログには作為(加工)が入り込む余地はほとんどありません。そこに映る「あり得ない現象」はリアルそのものなのです。だから対策を打たなければならない。そうしなければ待っているのは命の終わりなのです。

「漠然とした恐怖や不安も、客観的に見ることによって具体的になり、対策が明らかになる」わけです。

この教訓は、ぼくたちの日常生活でも当てはまることではないでしょうか。
トラブルの渦中にあると、「木を見て森を見ず」という言葉があるように、視野が狭く主観的になってしまいがちです。そんなときこそ、俯瞰して物事を捉えることが大切なのだと思います。

どんなに困難な状況にあっても、解決策は見出せる。それは映画の中でも、実生活においても同じこと。必ず突破口はあります。突き進む勇気さえあれば、あとは勝利を掴みとるだけなのだと思います。
本作における突破口は、写真特有のものでした。徹底的に写真にフォーカスしており、その一貫性がほんとうに気持ちが良かった。

そして、本作のクライマックスからは「なにかを成し遂げるには犠牲はつきものであり、無傷でつかみ取れる勝利はないのだ!」という熱いメッセージを感じとれて、すばらしかった。

このように、日常に持ち帰ることのできる教訓はもちろん、思わずビクッと身体をこわばらせる、ホラーとしての要素もしっかり用意されていて、見応えのある『ポラロイド 』。オススメの一本です。 

【鑑賞満足度:★★★★☆】
【オススメ度:★★★★☆】

ケンシン