「鹿の王にも犬の王にもなれず…」鹿の王 ユナと約束の旅 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
鹿の王にも犬の王にもなれず…
ベストセラーのファンタジー小説シリーズをアニメ映画化。
細かな設定や世界観など作り込まれている。それはいい。
が、演出や脚本が不親切なのか、把握しにくい。
それとも、単に私の理解力が無かっただけなのか…?
要約するとそう複雑ではない。
・強大な帝国が小国を攻めようとしていた。
・謎の疫病により、断念。現在は併合状態に。
・消えたと思われた疫病だが、再び世界を脅かそうとしていた…。
何だか今の世を表しているような…。時々小説や映画って未来を予見するものがあるから驚く。『復活の日』とか『コンテイジョン』とか。
・かつて最強と言われた戦士団の頭で、鹿使いの男。戦いに敗れ、地下牢に幽閉の身。
・地下牢を疫病が襲い、多くが死ぬ中、男だけ生き延びる。疫病の発生源は謎の山犬。噛まれるが、この時不思議な出来事が…。
・男は脱走。山犬に襲われそうになった一人の幼い少女を助け、連れて。
・妻子を失った身。血は繋がらないものの、“父娘”として旅を続ける。道中知り合った者に招かれ、ある村へ。穏やかに暮らす。
・帝国の若き天才医師。疫病の謎と治療を探す。
・疫病はかかる国の民とかからぬ国の民がくっきり分かれる。それは何故…?
・地下牢での一件により、その謎を解く鍵は脱走した男にあると見て、男を追う。
・後追いの女は雇い主から後追いだけではなく暗殺も命じられる。優れた後追い能力を駆使し、男が居る村に辿り着く…。
・突如村に山犬が現れ、少女を連れ去る。
・救出に向かう男。青年医師と後追いの女も同行。その旅の中で…。
・帝国の某領土の主と臣下の陰謀。
・“犬の王”と呼ばれる山犬の男の目的。
・数奇な因果に導かれた者たちの果ては…?
男の行動は分かる。“娘”を救出する。
青年医師の行動も分かる。病から民を救いたい。
その他の登場人物たちの行動の意味がよく分からない。
後追いの女の心変わり。
領主とその臣下は何故男の命を狙う…?
山犬の男の目的も然り。“継ぐ者”を探し待っていたって事…?
山犬に噛まれて以来、男に宿る謎の力。何だか“もののけの呪い”みたい。
青年医師は疫病にかかる/かからないの謎を解き明かす。それは、鹿の乳を飲む/飲まない…って、それが明暗…?
山犬の主の老人に導かれるも、男は「犬の王にはならん!」と拒否。だって、そうじゃん。“鹿の王”ってタイトルなんだから。タイトルの意味は…?
“犬の王”は少女。少女にも宿る謎の力…。
男はある行動に。この行動に、劇中台詞で語られていた“鹿の王”の意味が…。
争いは去り、再び平和が訪れ…。“父”と“娘”、それぞれの生きる世界で…。
登場人物名のみならず、各々の関係性、それぞれの国、用語、設定、思惑が交錯し合い、把握の難しさに拍車をかける。
キーとなるもの(鹿の乳や野草)も序盤から伏線張ってあるものの、今一つピンと来ない。
原作既読者には2時間の尺では物足りないかもしれないが、原作未読者には話に追い付いていくのもやっと。
唐突な設定/描写や「?」な展開、ポカ~ンと置いてきぼりになる事もしばしば。
作り込まれた設定や世界観は素晴らしいが、一見さん完全お断りなのがキツい…。
時代物×ファンタジーで、鹿や山犬が登場。自ずとかの名作が思い浮かぶが、足下にも及ばず…。
堤真一、竹内涼真、杏ら豪華ボイスキャストはまずまず。
画力はあるが、目を見張るほどの美しさはあまり感じられず。
名作アニメ映画で作画を担当した名作画監督の監督デビュー作らしいが…。
作画の腕と演出の腕は別もん。
一応これで一話完結のようだが…。
何か説明不足、中途半端な気がして、消化不良…。
最も、興行も見た人の感想も鈍く、続編あったとしても実現しないと思う。