劇場公開日 2019年10月26日

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「2時間で生涯を描くという無謀」一粒の麦 荻野吟子の生涯 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)

3.02時間で生涯を描くという無謀

2019年10月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

1本の映画で、偉人の生涯をなぞるという“無謀”が出てしまった残念作だった。
ロマンチックな誇張を排する、実直な描き方は好印象だが、あるテーマを持って掘り下げたドラマとは言えない。
例えば先日観た映画「二宮金次郎」では、時期が限定されていたので、テーマが絞られた、まとまりのある作品になっていた。

山田監督は、舞台挨拶で「(高踏的な)“芸術”なんて要らない」と語っていたが、分かりやすい作品であることは間違いない。
性感染症にかかって、男子医学生が見つめる中で、衣服を脱がざるをえないシーンなどは、短いが見ごたえがあった。
しかし全体的に、一つのシーンと次のシーンとの連続性が乏しく、また、ベテラン俳優で固めたわりには、ぎこちない印象が拭えない。

それらの理由は、あまりに展開が早いためだろう。
主人公の医師としての仕事の姿や、信仰に至るまでの心の動き、若き夫との恋愛、そしてそもそも、子供が産めなくなった若き頃の苦悩さえ、満足に描かれることはなかった。
文献資料の大幅な不足は想像できる。しかし、“誇張”は不要だが、作り手の人物解釈に基づく“創作”こそが、伝記映画の醍醐味だし、腕の見せ所のはず。

舞台挨拶では、作品に対する思いが伝わってきて感動的であった。(ついでに言えば、女優とは何と美しいものかと改めて驚いた。)
ただ、“偉人伝”として、全生涯を描きたかったのは理解できるが、たった2時間では不可能であり、やはり何らかの切り口が必要だったと思う。

Imperator
Imperatorさんのコメント
2019年12月9日

けっこう感動的な舞台挨拶で、作り手の思いが伝わったので、心情的には低い評価にはしたくなかったのですが、仕方ありません。
役者は、おっしゃるように錚々たる面々でしたが、みんな「友情出演」っぽくて・・・。

Imperator
たこ姫さんのコメント
2019年12月9日

荻野吟子に以前から興味があったので見たが、映画としては三流でがっかりした。よい役者をたくさん使っているのにあの演出⁉️監督ひどすぎ。別に芸術性を要求しているのではない。演技指導が無茶苦茶。大袈裟な台詞まわし、医学校での男性達のいじめ、役所の門番の高笑い、草原に寝転がるシーンなど多数。それに時代考証が変。明治元年に最初の結婚をしているが、ほとんどの男性はちょんまげだったはず。
他の方が2時間で生涯を描くのは無理と書かれていたが確かに。しかしもう少しやりようがあったのでは?

たこ姫