「最低限「作品紹介」はみておいた方がいい作品」魔女見習いをさがして しーぷまんさんの映画レビュー(感想・評価)
最低限「作品紹介」はみておいた方がいい作品
まずこの映画を楽しむ(または好みじゃない作品なのに見てしまわないようにする)手段として、
映画の「作品紹介」は見ておいた方がいいと思いました。
事前情報を全く入れずに鑑賞すると「思ってたものと違う」という事になりかねません。
仕方のないことなのですがそれくらい「勘違いしやすい作品」だとは思います。
この映画は「おジャ魔女どれみ」20周年記念作品ですが、
この映画においておジャ魔女どれみはあくまで「TVアニメ」として扱われるので、ドレミを始めとしたテレビアニメシリーズのキャラクターは「キャラクター」として少し出てくるだけですし、基本的には「おジャ魔女どれみのファンが主人公」というベースのもとで話が転がっていきます。
なので続編やスピンオフだと思って観に行くと面食らいます。
(私は1年近く前から流れていた上映前の予告を見て、既にこの映画の概要をなんとなく知っていたので問題なかったです。)
そして本題のレビューに入りますが、
この映画の構造としては、
◯おジャ魔女どれみの聖地巡り
◯「おジャ魔女どれみ」を通じて3人の主人公が成長していく人間ドラマ
◯大人になったファン達への(基本的に)応援メッセージ
+α
の構成となっています。
絵のタッチやテレビシリーズのコミカルさなどを受け継いでいる為凄くメタ的な視点に見えたり、小ネタを挟んだりとファンサービス的なものがちょくちょく入っていたりと、構成としてはかなりファンなら唸る出来になっています。
映画としてのストーリーも粗はいくつか挙げられるものの、根幹がしっかりしていて、テンポよく進むので見ていて気持ちが良かったです。
※こっからはネタバレ多く含みますのでご注意下さい。
特に良かったと思うのは「3人の成長を描いた人間ドラマ」の要素。
ある程度老若男女に分かるようなシンプルかつオーバーな話にはしていますが、非常に3人のドラマを短い時間で丁寧に積み上げて成長していく姿を描いているなと思いました。
あとは3人が出会うことで起きた「化学反応」が前述の通りテンポ良く「おジャ魔女どれみ」らしいドタバタ感を醸し出しながら描かれていました。
(色々言いたいことは後述しますが)最終的な着地も、3人が抱えていた悩みを解消しつつ、その上で最後の方まで宙ぶらりんになっていた「悩みによって阻害されていた自己表現」がうまくおジャ魔女どれみをエッセンスにして達成される描写がそれなりに作り込まれていたと感じます。
否定意見の多めな中盤〜終盤の恋愛要素ですが、そこは別にすんなり受け入れられました。
ここで恋愛要素が絡むキャラクターは一見他の2人と同じように物語が進むにつれ成長していく……と思いきや、最後の一歩が踏み出す勇気を持てない(就職の話が出てきますが2人に後押しされて行ってみた感じが強い)キャラに留まっていたので、ここでその勇気を振り絞るシーンが「おジャ魔女どれみから教わった事」「あのアニメを見たから変われるきっかけになった事」というところまでは達したと思います。
問題は「SNSの扱いと扱う人の人間性」についてもメッセージをねじ込んだ事で、どうにもそのキャラと恋愛で絡むもう1人のキャラクターに説得力がなくなったかなぁと思います。
(このキャラクターに恋愛要素を入れるのは問題ないと思いましたし、SNSのメッセージも最後の最後で「え?」ってなるまではそれなりに説得力があったと思います)
あとは主人公3人の1人が「離れ離れになったお父さんと偶然再会するがハッピーエンドではなく……」というシーン、これは多くの方が指摘されてるように八つ当たりや痴話喧嘩の話が不自然すぎましたね。
喧嘩なんかなくても彼女は「落ち込みすぎて先に広島に帰っちゃう」「それに負い目を感じて追っかける」展開は出来ましたし、喧嘩別れにする必要はなかったなぁと思います。
ただし、不用意にハッピーエンドにせず、そのお父さんとの再会シーンをベタベタに盛り上げないのは好感が持てました。
一番気になった要素もラストにありますかね。
1人はお店を開くのはいいとして、他の2人はそれぞれの道を進んでるけど仲良しでそのお店によく通う
……の方がこの映画のリアリティーラインからすると自然かなぁと思いました。
(で、お店が繁盛してる裏でドレミたちが一瞬走る影が映って、その横には箒が……くらいな感じにしとけば最後にぶっ飛んだイメージシーン入れなくても良かっただろうし)
あとちょっと気になった点はキャストの問題ですね。
レイカ役の百田さんは一番違和感がありました。
テンションの高いキャラですがテンションと裏腹に声に抑揚がなく滑舌のせいなのかセリフがかったるい。
ただし一番アニメっぽいキャラなので難しさはあったでしょうね。
それを加味すると主要キャスト3人、脇役の俳優さん達も含めてそこまで悪くなかったと思います。
(手放しで「OK!」とはとても言いませんが……)
総じて「粗はあるけど細かいところなので、オススメできるかどうかと言われたら断然オススメ」です。
ただし、一番最初にお話しした「防げる勘違い」があるのでそれにはご注意下さい。