「激動の人生を描ききったが、後半にもっと盛り上がって欲しかった...」ロケットマン jeromisunさんの映画レビュー(感想・評価)
激動の人生を描ききったが、後半にもっと盛り上がって欲しかった...
エルトン・ジョンについてはyour songくらいしかきちんと聞いたことがなかったものの、
ボヘミアンラプソディのデクスター・フレッチャー監督ということで観に行きました。
幼少期から両親の愛を受けられず育った、変わり者のレジー(エルトン・ジョン)が、
自己表現の手段として得た音楽の才能に開花していく期間はとても華々しく、ミュージカルともマッチしてとても楽しい構成が展開されます(親の愛を受けられない辛さは抱えてはいるが、とても魅力的な映像でした)。
特に、少年期でパブでロックンロールを披露する若き日のエルトンはとってもクールです。
そこから一気に音楽界の頂点に駆け上がってから、酒、ドラッグ、買い物依存による金が全てといった感覚の麻痺など、絶頂でありながら絶望の日々が続いていく。
やはりそうなると幼少期のような華々しいミュージカルシーンではなく、辛さを抱えながら
行うエルトン・ジョンの舞台公演が中心のシーン展開となってしまい、ミュージカルとしての楽しさというより、「エルトン・ジョンの心の悲鳴を聞いて沸き立つうファン」という構図に見え、切ないストーリーに思えてしまいました...。
映画に対して何を期待して観るか、という点が重要なのかもしれませんが、
私は「ミュージカル」の要素を強く求めていたフシがあったので、後半の悲しみや憎悪が入り乱れる人気者の苦悩の部分はあまり求めていなかったのかもしれません。
そして何より、ラストシーンにかけての盛り上がりには欠けていたように感じました。
主人公のエルトン・ジョンが現役であるため、半生を描くという形にしたのではあると思いますが、ラストシーンで「現在のエルトンは〜〜〜している」という字幕と静止画で〆るのはどうも納得がいかなかったし、ミュージカル作品として観に行ってしまっていた私としてはスッキリしませんでした。
様々な苦難を乗り越えたエルトン・ジョンが、子供時代の自分やずっと和解できずにいた両親、裏切りを行ったビジネスパートナーなど全員入り乱れで、これまでの鬱屈さをぶっ壊すような壮大な歌とダンスで〆て欲しかったというのが希望でした。
ただ、エルトン・ジョンという人についての理解を深められた気がして、映画館の帰り道にyour songを聴きながら歩きました。