「シズルなお父さん」劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
シズルなお父さん
ファイナルファンタジーがゲームであるということくらいしかわからずに挑んだが、そこはあまり問題ではなかったね。一番不安に思っていたところだから、本当によかった。
観ようか悩んでいる方は観て大丈夫。
お父さんは家族全員に対して、息子はお父さんに対して、距離感がおかしいよね。一応、距離感がおかしい理由は説明されるのだけれど、いくらなんでも遠すぎだよね。
ゲームを始めたときとか、教えたりすることで、もっと簡単に距離が縮まるだろ、とか、つい考えてしまうけれど、この過剰なまでの距離の遠さがツッコミどころであり、笑えるところなんだ。
漫才でボケに対してツッコミがあるように、作品のツッコミどころというのは笑いどころでもある。
お父さんと息子の距離が徐々に近付いていくにつれ、笑えるツッコミどころは、なめらかに、感動するツッコミどころへと変化していく。
ゲームの中のお父さんであるインディさんが、ゲームの世界に慣れ、強敵に挑む熱さを増していくように、笑えるインディから感動するインディへと変わっていくのだ。
感動というのは少々大袈裟な表現だが、つまり、単に笑えただけのツッコミどころが、いい話にすり変わって、エンディングに向け加速していく。
溢れ続けるツッコミどころは、大いに笑えて、少し感動できる、とても面白い作品だった。
エンターテイメントの基本は異文化交流だと誰かが言った。その中でも一番身近な、親子の物語というベタ中のベタなストーリーに、ゲーム内での交流というイマドキさ、新鮮さを持ち込んで、シズル感のある作品に仕上がった。と思う。
似た者同士の父と子の熱さとシズル感。風味園の中島さんが求めている出来なんじゃないか?
とれたぞ!と叫ぶ声が聞こえてきそうだ。
あと、難癖をつけるとしたら、息子とマイディの同一人物感が薄かったね。
キャラクターのせいで声を変えなければいけないのはわかるが、もう少し話し方を似せる努力をしてほしかった。
お父さんとインディさんを共に吉田鋼太郎さんが演じている、完璧な同調の前では、別人感が一層悪目立ちしてしまう。
最後に、結局は壮大なゲームCMだったのではと、妙な勘繰りをしてしまうが、光のお父さん計画はシズル感あるお父さんとなり、温かさをお届けしたってことで、いいかな。