「洒落た世界観が楽しい」劇場版 ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)
洒落た世界観が楽しい
ファイナルファンタジー(スクエアエニックス)はプレイステーションで遊んだことがある。ロールプレイングゲームなのでバイオハザード(カプコン)やメタルギアソリッド(コナミ)などのアクションゲームとは違って、レベルを上げたりレアな武器を手に入れたりするのに本筋と無関係な場所を何度も行き来しなければならず、途中で辟易した記憶がある。それでもフェイ・ウォンのEyes On Meが聞きたくて頑張ったこともあったしその後もいくつかのタイトルを遊んだが、それもプレステ3までで、プレステ4を購入することはなかった。
本作品はファイナルファンタジーⅩⅣを積極的に肯定する。様々なエリアやダンジョンに赴き、ミニゲームやミッションをクリアしながらジョブを身に着けスキルを鍛えレベルを上げる。そして見知らぬ人同士でハンドルネームの交流をし、パーティを組んで冒険に出かける。ときに遭遇する強大な敵に対しては、各人のジョブとスキルを最大限に活かしてバトルを試みる。敵はあくまで仮想敵であり、バトル上でしか存在しない。他人を陥れるようなオンラインゲームもあるかもしれないが、ファイナルファンタジーシリーズはなべて平和的だ。やっつけるというよりもミッションをコンプリートするという感覚である。
ビデオゲームは人間の想像力に訴えるゲームだから歳を取っても楽しめる。加山雄三さんや鈴木史朗さんがバイオハザード好きなのは有名だ。お二人とも80代である。
さて本作品のお父さんは還暦だが、還暦くらいならまだまだ現役のゲーマーはたくさんいるだろう。むしろプレステのプレイヤーは年配の人が多い気がする。というのもプレステは主に自宅でやるものだから、スマホが主体の若者よりは年齢層が高いのではあるまいか。
本作品を見る限り、最新のファイナルファンタジーは大画面の液晶ディスプレイ向けに画像がとても美しくできている。これもCPUの処理速度やメモリの容量が飛躍的に向上したからであろう。この美しい画像のゲームをスマホの小さな画面で遊ぶのはもったいない。
さて本作品は映画としてはほのぼのとしたホームドラマである。切羽詰まった問題もなく家族の危機が訪れる訳でもない。ただギクシャクしていた父と息子がゲームを通じて漸く触れ合うことができたという単純な話である。しかしそれがいい。坂口健太郎と吉田鋼太郎の名演技あってこそではあるが、実利のあることばかりが意味のあることではないという洒落た世界観が楽しい。なんだかんだで最後まで面白く鑑賞できる。久しぶりにプレイステーションを引っ張り出して遊んでみようかという気になった。