「【”ホテルの気品は働く人々によって作り出される・・” 気品あふれる唯一無二のNYの文化的ホテルで働く人々とその歴史を描いたドキュメンタリー作品。】」カーライル ニューヨークが恋したホテル NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”ホテルの気品は働く人々によって作り出される・・” 気品あふれる唯一無二のNYの文化的ホテルで働く人々とその歴史を描いたドキュメンタリー作品。】
ー貴方のホテル選択の基準は何ですか・・-
■このドキュメンタリー作品はNYにある決して規模は大きくないが、多くのアーティスト、名だたる政治家、英国ロイヤルファミリーに愛されるホテルに秘密に迫ったドキュメンタリー映画である。
◆今作に出演し、カーライルホテルに魅了された人々
1.ジャック・ニコルソン
-今作で、従業員たちが彼に対して語る数々のエピソードを聞いて、ジャック・ニコルソンが益々好きになった。ー
2.ジョージ・クルーニー
”一泊、一万ドルするスイートに奥さんと3カ月宿泊するって、どうなのよ!”と思いつつ、彼のカーライルホテルを愛する言葉の数々に納得してしまう。
3.ウディ・アレン
本人は出て来ないが、2年間もカーライルホテルに宿泊していたとか、「カフェ・カーライル」で楽しそうに連日演奏していたとか、「ハンナとその姉妹」の舞台がカーライルホテルだったとか(知らなかった・・)”どれだけ、このホテルを愛していたのだ!”という従業員及びトミー・リー・ジョーンズの証言など、何だか嬉しくなる。
―NYをこよなく愛する、ウディ・アレンがそこまで入れ込んでいるホテルなのだね・・-
4.その他、ウェス・アンダーソン(”ホテル”トイエバコノヒトデスネ)や、ソフィア・コッポラ(どんだけ、お父さんお金持ち何だ!)、レニー・クラヴィッツ(ああ、君はそんな風にこのホテルを”使用”しているんだね・・)ロジャー・フェデラー、ビル・マーレイ、ハリソン・フォード等々興味深いインタビューが満載である。
しかも皆さん、実に嬉しそうに語る語る・・。
5.カーライルホテル内にある、「カフェ・カーライル」がミュージシャンにとって、どれだけ貴重な場であったか。
ここで多くのミュージシャンが演奏を楽しみつつ、腕を磨いて来たのかもきっちりと描かれる。
■今作を、魅力的なドキュメンタリー作品にしている要素
・カーライル・ホテルで働いているドアマン・コンシェルジュ・エレベーター係等々の方々が、とても良い表情で
”誇りを持って、実に長い間働きながらも” ”数々の目にしてきた秘密”を決して口外せずにインタビューに答える姿であろう。
そこには”JFK”と”マリリン・モンロー”の関係性が仄かに漂っていたり、
英国王室との関係性を築くきっかけになった故、ダイアナ妃の姿と、当然の如くウィリアム王子がフィアンセとともにホテルを訪問する姿も、詳細は”秘密”というスタンスで描かれる。
・吃音症のコンシェルジュ、ドワイトさんが引退を決めた際の言葉が印象的である。
”社会から品格が失われてしまった・・”
超一級コンシェルジュとして長年多くの常連客から愛されてきた彼の言葉は重い。
接する客層の変化を身に染みて感じた経験から出た言葉であろう。
<カーライルホテルが醸し出す気品は ”働く人々によって生み出される”
と言う言葉がとても腑に落ちた作品。
この言葉はホテルだけではなく、全ての営利企業に当てはまると思う。
”誇りを持って長年働ける職場とは、実に貴重なのであるなあ・・。そして、そのような雰囲気を醸成するには時間がかかるが、経営陣の気概、気骨にかかっているのであろうなあ、”と感じた作品でもある。>
■蛇足
今作を鑑賞後、日本で”カーライルホテル”に匹敵する宿は何処であろうか・・”と考えた。
私は、宿としては、京都の”俵屋旅館” ”美山荘”が一級であろう・・、
地元で言えば”角上楼”かなあ・・、と思いながら観ていたが、
文化的なホテルとなると・・”山の上ホテル”かなあ・・”などと楽しく考えながら鑑賞していた・・。
<2019年8月 伏見ミリオン座で鑑賞>
<2010年11月10日 別媒体にて再鑑賞>