「テレビアニメで1~2クールかけて描けば…」HUMAN LOST 人間失格 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
テレビアニメで1~2クールかけて描けば…
みなさんのレビューの採点が低くてかなり不安でしたが、期待していた作品なので、ハードルを下げ、覚悟して鑑賞してきました。率直な感想としては、思ったほど悪くないどころか、わりとおもしろかったという印象です。太宰治の「人間失格」に着想を得たというものの、それ自体を読んだことがないので、先入観も予備知識もまったくないまま鑑賞したのがかえってよかったのかもしれません。
冒頭から、近未来の架空の日本を舞台にしたSFであることはすぐに理解できました。そして、科学の進歩が医療の革新をもたらした一方、新たな問題も生まれ、そのひずみの中で苦しむ人々が社会や体制に抗っていくというのが、ストーリーの大筋です。近未来のSFにありがちな設定ではあるものの、この手の話は大好きなので、最後まで楽しく鑑賞できました。
とにかく映像が美しく、見応えがあります。「シドニアの騎士」や「GODZILLA」のような映像が嫌いでなければ、ポリゴン・ピクチュアズが創り出す作品世界を堪能できると思います。そして、異才を有しつつも心のうちに闇を抱えた主要キャラも、なかなか魅力的でした。そこに、宮野真守さん、花澤香菜さん、櫻井孝宏さんら実力派声優陣がキャスティングされており、まさに万全の体制です。
設定、映像、キャラ、キャスティングと、ここまでなんの文句もないのに、それでも評価が上がらないのは、やはり脚本のせいでしょうか。物語が進むにつれていろいろなことが明らかになってくるとはいえ、それがわかりにくく、腑に落ちない部分も多かったです。そのあたりを丁寧に描いてくれれば、かなり見ごたえのある作品になったのではないかと思います。そういう意味では、テレビアニメで1~2クールかけてじっくり描いたほうがよかったかもしれません。