「原作が好きすぎて…」いなくなれ、群青 鳴木さんの映画レビュー(感想・評価)
原作が好きすぎて…
私は原作シリーズが大好きで、全6巻何度も読み返しています。
なので、正直実写版の予告を見た時から絶対見に行かないと思っていました。
原作を知っている分、比較してしまってガッカリしてしまうと感じたので。
けれどDVDが発売されて、レンタルショップで見つけて、もしかして映画もものすごく面白かったりしたら嬉しいなと、食わず嫌いせずに見てみる事にしました。
映画自体は映像も綺麗で、ただの恋愛映画として見たとしたら登場人物全てに物語を感じる良い作品だと思います。
でも原作と違う点があまりに多くて、やっぱり比べて見てしまいました。
キャストの皆さんの演技もすごく上手いのが分かるし、感情も伝わってくるのですが、配役がしっくりこない…
個人的には真辺はもっと目力があるというか、芯が揺らがず、凛としたイメージだったので、どこか柔らかい雰囲気を感じる飯豊まりえさんよりも、堀役の矢作さんの方が合っている気がしました。
あと、原作でもトクメ先生が大好きなので実写版で仮面を着けていないのにガッカリしました。
なのにエンドロールを見ていたらやっぱり役名はトクメ先生、となっていて仮面を着けているということが、この物語において大切な部分じゃないの?と思いました。
ナドくんに関しても、名前に関しては真辺から「ナドさん」という言葉が1度出たキリで、七草も100万回生きた猫と呼んでおらず、これでは原作を読んでいる人ならともかく映画を初めて見た人からはあまりに分かりにくすぎると感じました。
他にもハルさんのキャラが全然違う、など小説と違うものとは思いつつもあまりにも原作と違いすぎて、やっぱり残念でした。
私が細かいところを気にして見すぎたんだろうとも思うのですが、映像綺麗なのに横顔のシーンで髪が顔に引っかかっていたり、こだわっていないように感じてしまって、最後まであまり映画に入りこめず…
世界観、雰囲気は原作と同じく不思議で透き通った感じがあるのですが、そもそも原作自体、理論的で集中して読まないと理解が難しいところがあるのに、そこが映像じゃなく語りになっていたり、分かりにくかったり、全体的に雰囲気だけで、肝心の内容が曖昧になっていると思いました。
これだったらわざわざ実写にしないでもいいんじゃない?と正直感じます。
大好きな作品だったからこそ、もっともっと丁寧に映像化して欲しかったし、小説がもつ言葉や雰囲気を映像で全部表現出来ていたらとても凄い映画だったと思うので、残念です。