「ミステリー&ファンタジー」いなくなれ、群青 kurumiさんの映画レビュー(感想・評価)
ミステリー&ファンタジー
音楽と映像と横浜流星の声が、不思議な世界観を作っていた。
誰かに捨てられた人たちが集まる島、階段島。
最初、捨てられたのは思春期の学生たちのみかと思うような雰囲気を映像から感じた。大人たちはお世話係としてのみ存在するのかな。しかし、そうでもないのか? 大人でも、捨てられた人格はこの島にくるかもしれない。と見終わってしばらく経ってからそうも思った。
七草たちの周りにいる大人、特に女性が何故かほのかに色っぽいので少々意味深。担任の先生と郵便局員の時任。時を任されると書いて時任。ここにも意味があるのかもと考えた。なんの意味があるのかはまだ発見できてない。
真辺由宇だけフルネームなのがとても気になった。だけど、たぶん、真辺だけ捨てられた人格ではなく、捨てられた七草の人格を探しに来たからなのでは?という考えに至った。原作を読めば解決するのか?
七草は、積極的に生きる人生を拒絶したような、どこか大人びていて、人生を達観しているような雰囲気。感情を押し殺している。自分にとってとても居心地のいい場所を発見し、静かにその生活を楽しんでいる。でも、真辺がこの島に来たことによって、段階を踏んで変化していく。閉じ込めた感情があらわになっていくというか。真辺の真っ直ぐな思いよって、七草の固まった心、ある意味おじさん化した心が崩れはじめ、積極的に生きる気力、自分を良きものとして認めて生きる煌めきのようなものを宿していく。
最後の最後のワンカットに、それが集約されて表現されていて、男として、七草が現実世界で生きる決意のようなものを感じ、新しいかたちのラブストーリーなのでは?と心が緩んだ。
↓↓↓以下は、監督やスタッフさんたちのテクニカル的に不足しているのか、意図的なのかがわからず、個人的に混乱していることについて。あんま読まなくてもいいやつかも。
時任が堀と草原に立ち、島のあり方について、おそらく、真辺のような存在がこの島に来たことによって変化した世界について考え、未来を案じているような2人のシーン。
時任のあの衣装はどうなのか?と疑問に思った。郵便局員の衣装がとてもエロスを感じるものだったので、風になびくことを想定して、もっと幻想的な服装が良かったのでは? もしくは、いっそのこと、時任は郵便局員の服装のままで良かったのでは?と思う。あれでは、普通のおばさん感が出ていて(おばさんではないのに)、世界観が壊れた。
他にも世界観が崩される要素はいくつかあった。
例えば七草の制服のスラックス。ピッタリしたタイプとユルいタイプの2サイズがあるように感じた。それによって、私の中で時系列が崩れて混乱した。普通の生活では別のサイズのスラックスをはくこともあるだろうけど。やはり、ここは現実世界ではないので、同じサイズのものを着用してほしかった。意図があるのであればそれはそれでいいけど、だとしたらどんな意図なの?って思う。後ろ姿が要所要所で出てくるので、そこは丁寧につくってほしかった。
あと、七草の肌の色や、顔にできる影の部分。七草の顔にちゃんと光が当たっている時の丸みを感じる美しき少年感と、レフ板によって光を当て忘れたのか、顔に影ができている七草の顔はあまりにも印象が違って見えて、私の中の世界観が混乱した。
シャープな七草を表現するのであれば、その意味を分からせるシーンが必要だったのでは?
ここは、見れば見るほど混乱中。これに関してはある程度意図があるようにも感じるが、そうであれば、もっとなめらかに繋がっていく見せ方もあったのでは? 単純にテクニカルな問題であってほしいと思う。
と、疑問もいろいろと書いたが、総じて素晴らしい映画だった。積極的に、煌めく人生を生きるためには、自分を認めること、受け入れること、他人とのかかわり合いの中で、世界は豊かになっていくと知ること。そのためには、内省的な心境になること、自分の心に穿ちいることの大切さを教えてくれる物語だった。
とても難しいものを描いた作品なので、監督・スタッフ、出演者ともにかなり苦労したのではないだろうか。
横浜流星と飯豊まりえをはじめ、出演者の熱演と音楽や空の美しさなど、素晴らしい点もかなり多い。
とにかく、多くの方に映画館で見て欲しい映画!!!