「「勿体ない」という気持ちと比例して、レビューは長くなります。」空の青さを知る人よ よしさんの映画レビュー(感想・評価)
「勿体ない」という気持ちと比例して、レビューは長くなります。
「あの花」「ここさけ」の製作スタッフによる長編映画です。流石に映像のクォリティは高いですね。
でも、高い評価は難しい作品だとも感じます。
この映画は二つの主題があるように思います。
一つは、「あおい」の気持ちと心理描写。
姉への気持ち。感謝と後ろめたさ・・・その反動で沸き起こる姉への苛立ち。
「しんの」への恋心。そして、姉の幸せを願う気持ちとの葛藤。
思春期の若者らしい制御出来ない気持ちの表現が秀逸です。ラストの「あー、空、クッソ青い」というセリフも、実感がこもっていて切なくなりました。
とても評価出来るポイントですね。
もう一つは、13年前の「しんの」と現在の「慎之介」との邂逅、そして「慎之介」の再生。
挫折や絶望を味わい、人生も「あかね」のことも諦めた「慎之介」。この「慎之介」の再生をどのように描くのか・・・
でも、この二つ目のテーマは、私にはとても中途半端に思われます。
お堂で出会う二人に「あおい」が「あかね」の危険を知らせます。でも、「慎之介」は後ろ向きにヘタレたまま。最愛の人の危険にも前向きになれない男に、戸惑いと興ざめを覚えます。
『予定調和にはしないよ』という骨太な意思表示でしょうか?でも、エンドロールではハッピーエンドにしていますから・・・良く分かりません。
興ざめしたのはまだあります。「あおい」と「しんの」がいきなり空を飛ぶ超絶展開には驚きましたが、問題はそんなことではありません。
そのシーンで、「あかね」の危険に対する「心配」や「恐怖」がまったく描かれていないことに、強烈な違和感を覚えます。
「あおい」は「あかね」を心配して、お堂まで必死に走ったんでしょ?
「しんの」は「あかね」の危機に、結界すら破ったんでしょ?
ストーリー展開上、一番大切なことを置き去りにして、無理やり題名のオチを付けた印象にこれも興ざめを感じます。
もう一つ挙げたいのが、「しんの」が現れた理由の明示が不明確だったこと。
何となくは分かります。お堂に保管されたギターが原因だったのでしょう。ただ、その明示が不十分だったので、結果として「しんの」が消えるシチュエーションも、中途半端になってしまいました。
例えば、「あおい」がギターをお堂から放り出すと同時に、「しんの」も結界を破って飛び出す・・・とか。
例えば、錆びた弦が切れると同時に、「しんの」も消える・・・とか。
「あおい」への共感は強く感じましたし、「あかね」のキャラクターにも好感を持てました。ハッピーエンドのエンドロールも良かったとは思います。しかし、高い評価は難しいと感じる、とても勿体ない映画でした。
PS西武秩父駅から池袋まで特急で87分。この映画の舞台には厳しいように感じます。