「あか姉の選択」空の青さを知る人よ に子さんの映画レビュー(感想・評価)
あか姉の選択
「井の中の蛙大海を知らず されど空の青さを知る」
これは劇中のキーとなるあか姉の言葉だけれど、
“空の青さ”は井の中にある大切な存在(妹)のことを指しているんじゃないかな。
表向きせつない恋愛込みの青春ストーリーに仕立てられているけれど、本当は家族愛(姉妹愛?)の話なんだろうな。まったく、個人の見解なのだけど。
主人公のあおいちゃんは、これ以上自分のせいであか姉が夢を諦めたり不自由な思いをすることのないようにと、上京を決意。
周りの登場人物も、あか姉のこと少しそんな風に気遣ってる空気がある。
だけどあか姉は諦めから田舎に残ったわけじゃないと思う。高校時代から差し入れおにぎりの具は、しんのリクエストのツナマヨじゃなく、あおいちゃんの好きな昆布だった。しんのと東京へ行かなかったのは、しんのよりもずっと大切な妹がここにいるから。
周りは勝手にあか姉の不幸な生い立ちを想像するけれど、あか姉にとって、井の中での妹との暮らしは、彼女の選んだ幸せに違いなかったはず。後にしんのと出会えたときも、かなり予想外という反応で、特に彼を待っていた様子ではなさそうだったし。
実際のところ過去の思いを引きずっていたのはあか姉ではなくしんのとあおいちゃんだった。
二人が過去を精算し、これからとどう向き合っていくか。結論は出ていないけれど成長の余地を残したまま完結。
最近のアニメ映画は本当に絵がきれいで、表現力がさらに豊か。この美しさのためだけにでも観にいく価値はあります。個人的にはあおいちゃんがガンダーラを弾き語るシーンが素晴らしいと思った。
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