「☆☆☆★★★ いったい誰がヒーローなのか? これは。絶えず観客を煙...」ライフ・イットセルフ 未来に続く物語 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)
☆☆☆★★★ いったい誰がヒーローなのか? これは。絶えず観客を煙...
☆☆☆★★★
いったい誰がヒーローなのか?
これは。絶えず観客を煙に巻く為の挑発と実験に満ち溢れた映画。
映画は5章仕立てで構成されてはいるが。 最後の5章目はエピローグ的な物。2章目と4章目も、それぞれ男女が出逢うまでの繋ぎとして存在しており。映画としては1章目と3章目の、愛が悲劇へと向かう悲しい話をじっくりと切り取っている。
映画は1章目の冒頭から挑発的に始まる。
いきなりサミュエル・L・ジャクソンのナレーションでスタートした映画は。突如としてアネット・ベニングに悲劇が襲う。
…と思いきや。
この辺りの、観客に対する挑発と共に。好き勝手と言える演出に付いて行けるかどうかで。その後の展開を面白く観られるかどうか…かなり意見が分かれるのでは?と思う。
その後の2章目は、成長した少女が感じる寂しさを幾度となく実験的な演出で描く。
実は、この時にお祖父さんのマンデイ・パティンキンに幼い頃の彼女が聞く「死ぬの?」は。映画の最後の最後になって、かなり重要な台詞だったのが分かるのだが…。この時にはまだ気が付いてはいなかった。
2章までは。この《死と悲劇》の繰り返しを必要に強調する。その為のキーワードとしてボブ・ディランが引用されているのですが。残念ながらディランに関する事柄に疎い為に、作品の訴えたかったモノを全て理解するには至らないもどかしさを感じてしまう。
3章目はそれまでとは一転。スペインでの愛のドラマをじっくりと描く。
2人の男性から愛された母親。その基でのびのびと育って行ったロドリゴの姿。しかしその裏では2人の男の嫉妬から、家族の別れがあった。
この3章目で特に目立っていたのが、時間経過を示す編集。
流石に、2度目のオリーブ畑の時には無理矢理感を感じたものの。1度目の家の中の柱をカメラが回り込む時の編集場面は、計4回(だったかな?)ワンカットに見える程の見事な編集だったと思えた。
他にもこの3章目には、ハビエルとイザベルの出会いの場面に於けるミスリードであったり。ロドリゴが事故を目撃した後の心の不安定さを不協和音で表したりと。観客の気持ちを、ほんの少しだけ逆撫でさせる音の演出には賛否が分かれるかもとは思ったのですが…。
幼いディランはお祖父さんに聞いた「死ぬの?」…と。
お祖父さんは「いつかは死ぬ!」と答えた後、ナレーションは本当はこう言ったと…。
「死ぬ訳ないじゃないか!」
そう死ぬ訳は無いのだ!
愛する人は肉体は滅んでも人々の心には生き続けて行くのだ!
そして。人が人生の決断を迫られて苦しんでいる時に、その背中を押してくれる人はヒーローに他ならないのだ!
2019年11月23日 TOHO/シャンテシネ1
因みに、ロドリゴが事故を目撃した時に。ハビエルはスマートフォン(iPhone?)を手に持っていた事からして、この時が現代か?
以後、15年以上後に2人は出逢う。その後、エピローグにあたる5章では、少なくとも42年以上は経過していた事実から考えて。映画の最後は、2080年頃にあたるのだろうか?(´Д` )