「人質の音楽会」ベル・カント とらわれのアリア 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
人質の音楽会
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ペルー日本大使公邸人質事件に材をとった小説の映画化ということだが、その虚実ないまぜの作為がよくわからない。オペラ歌手の件はフィクションなのだろうが、当時のフジモリ大統領の映像らしきものも出てくるし、犯人らがサッカーに興じている最中に特殊部隊が突入したのも事実らしい。完全に架空の国という設定ならいいが、中途半端に実際の事件の要素を混ぜてくるので、誤解されるおそれがあるのではないか。
ストックホルム症候群だとしても、中盤の微温的な日常はちょっとあり得ないほどで、恋愛模様はとってつけたようだ。一方で現実の事件の結末は知っているので、その瞬間がいつ来るのかというひりひりした気分は消えない。犯人と人質の交歓から一転破滅へ陥る展開は、シドニー・ルメット監督の「狼たちの午後」を連想させる。
女兵士カルメンの造型はなかなか良かった。裁縫用の糸と縫い針で傷口を縫うのは痛そうだが。
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