「イタリア語で”美しい歌(発声方法)”」ベル・カント とらわれのアリア Naakiさんの映画レビュー(感想・評価)
イタリア語で”美しい歌(発声方法)”
2001年に発表されたアン・パチェットによる同名の小説の映画化で映画ではただ南アメリカの国としか紹介していないが、1996年に起こった MRTAによるペルー日本大使館襲撃事件からヒントを得ていると本の紹介には書かれている。あまりにも物語にフィクション性が高いためにあからさまには事件や事柄に特性を持たさなかったためか?
この本は、2001年の"Amazon's Best Books of the Year"にもなっていて、ほかには、賞にも輝いている。
渡辺謙は、近頃日本で私生活のことをマスコミに取り上げられていたが、この機会にもう日本とアメリカの両方の生活をするより、いっそのことアメリカに重点を置いたほうが、こんな小さな国ではもったいないほどで、この映画に関しては、オスカー女優のジュリアン・ムーアを相手に引けを取らない良い立ち位置にいる。また通訳として出演のGENという役名の加瀬亮は、彼の才能なのか、通訳として自然な演技をしていたのが印象に残る。彼が、MRTAの女性メンバーとの恋は、彼女の未来がわかってしまうもので、作者の冷徹さが、この映画の評価を下げてしまう一つの要因であるかもしれない。それと、このシナリオの重要な要素として、人質とMRTAのメンバーが何故か時間が過ぎていくうちに、奇妙な仲間意識や連帯関係が生まれ、ラストのほうでは、メンバーが混成のサッカーをする場面まで描いているけれども、ストリー自体が遅く感じ、しかもイベントのような盛り上がるシーンがほとんど皆無と言っていい変化のないもので、いわゆるだれたシナリオと言わざるを得ない。
アメリカの新聞紙Village Voiceのコメント「情熱的でしかも芸術性の高い映画において、だれも目的もなしに愛したり、死んだりはしないものだ。」カナダ最大の日刊紙Toronto Starのコメント「暴力的な場面でも叙事詩的なクライマックスが、観客が息をのんでしまうという感情に訴えかける力がある。」というように批評家からは、ある程度、好感を持たれているのだが、ジュリアン・ムーアがインタビューでもオペラを自らは歌っていないと潔く答えていたのだけれども、それにしても口パクであるのがあからさまに見えてしまうのは、個人的にはもう少し工夫があるのではないかと思うし、彼女の顔と声の質がかけ離れているようにも思える。