ベル・カント とらわれのアリアのレビュー・感想・評価
全26件中、1~20件目を表示
テロ行為は…
決して許されることではないが、その背景にある動機や、歴史を汲み取らなければならないと改めて痛感させられた。映画は南米ペルー大使館の占拠事件がベースとなっている。ニュース映像はフジモリ大統領そのまま使っていたし。テロリスト達と人質達が長時間共にするうちに心が通じ合い、ある者は恋に落ち、共にオペラを聞き、サッカーに興じるようになり、異様な空間の中で、不思議な関係が構築される。いつかは終わりが来るだろうと誰もが思っているが、終わりたくない、このままでいたいと思うほど、そこはある意味、楽園かのような描かれ方をしている。育ちや、言語は違えど、テロも人質も同じ人間、互いに敬意を払っているという風に。そういう意味ではテロリスト全員射殺の結末は悲しい。映画でも突発的事故とは言え、人質一人が銃殺されており、テロ行為=悪という認識は今後も変わらないが、なぜ同じ人間が、そのような行為に至ったか、映画では500年抑圧されてきたとあったが、少数民族の歴史的背景を重んじなければ、この様な悲しい負の連鎖が繰り返されるだろう。テロ側の視点に立った珍しい映画。ソプラノ歌手を演じたジュリアン・ムーアの口パクと、渡辺謙との不倫は若干残念。
実際の事件からヒントを得て、別物の恋愛映画に変わった不完全な作品
1996年ペルーの首都リマで起こった、4ヵ月にも及ぶ日本大使公邸占拠事件から発想された原作の映画化で、ペルーの国名は伏せられ副大統領邸のコンサートパーティーが舞台となる。但し日系人大統領はそのままで、当時のジャパンマネーに頼る南米の貧しさが背景にある。貧困と差別からくる政治不信の打破を目論むテロリストの無計画さが、膠着状態を長引かせて、そこに生まれる奇妙な人間関係が新たなドラマを生んでいる。しかし、日本人実業家ホソカワがディーバと敬愛するソプラノ歌手ロクサーヌ・コスーの世界的名歌手の設定に無理があり、一夜限りの個人的なコンサートの為にその場に居合わせるのが不自然。また人質解放で子供と女性は最優先されるし、まして彼女はアメリカ人だけに国際問題として米国を刺激してしまう。ホソカワとの恋愛を描きたい作意が明らかで、それが通訳ワタナベとテロリストの少女カルメンとの恋とダブるのも工夫が足りない。折角の日本人俳優出演が勿体ないし、特に加瀬亮は実力の半分も出していないであろう。最後の特殊部隊突入に込められた人道主義からの批判的描写も理解はするが、敵味方入り乱れ切迫した状況では仕方ないのではないだろうか。人質監禁を交渉の道具にするリスクは、自滅に近い。
主演のジュリアン・ムーアは貫禄はあるが、吹き替えの演技が良くない。交渉人役のセバスチャン・コッホとラテンアメリカ人のテロリストを演じた俳優はいい味が出ている。それに、クリストファー・ランバートを久し振りに観た。さすがにおじさんになりました。
現実的な社会問題に深入りすることなく、男女の恋愛ものの凡庸さに終わった不完全な作品。
日本大使公邸占拠事件
1996年のペルーでの事件をヒントにしているだけで、実話ではない。
南米某国の副大統領邸で、有名な女性オペラ歌手(ジュリアン・ムーア)を招いてのコンサート中、武装ゲリラが侵入、占拠され人質にされる。
事件は長期化し、その間、ゲリラと人質の間で奇妙な友情が生まれる。
集団ストックホルム症候群かな。
加瀬亮さんが素晴らしかった
SPECの元SATで男らしい瀬文役を演じた加瀬亮さんとは打って代わり、渡辺謙さん演じるホソカワの穏やかな通訳係ゲン役として出演。
更にバウリンガルでこの方、運動神経だけではなく、頭脳も明晰なのだなぁ(勿論努力の人なのだと思います)と驚かされる作品。
ただ内容は後味が悪すぎて残念、社会派を見せたかったのか、ラブストーリーを見せたかったのか、脚本が今一つのところで感情移入が出来なかった。
歌に生き愛に生き
コロナ自粛のため大量借りした中の一つ。音楽関係の映画ではないことは解説読めばわかったが、実際のペルーの事件をもとにしてるようで、緊迫感溢れるシーンと、テロリストと人質が心通わせるシーンが印象的。ハイライトは皆の前でのアリアを歌うシーン。やはりトスカでしたね。囚われた身でのという意味ではこの歌以外ないでしょう。
この状況だからこそ起こりうる恋愛もさもありなん。
今のコロナ自粛もだけど、そんなには緊張感て長く続けらるものじゃないんだなと。勿論事件は違いますけれどね。
加瀬くんが大活躍!
ジュリアンムーアと加瀬亮目当てで。
ジュリアンのオペラ歌唱の口パクは、うーん口パクだよねってわかる感じだった。難しいだろうから仕方ないけど。
加瀬くんの通訳能力が全て!みたいなシチュエーションで、おお、大活躍やん!と思いました。
反政府ゲリラの女性とのロマンスもいいわねーって思ってました。
南米の政府高官の家でのパーチーに、大統領が来ると聞いて反政府ゲリラが襲撃、大統領はいなかったが居合わせた人を人質に取り籠城、女性と子どもは開放されたのに有名人だからという理由でジュリアンは囚われたまま。兵糧攻め、水攻めをされ、ゲリラ側の交渉にジュリアンの歌うアリアが利用されます。
また、反政府ゲリラと人質の間に、同じ釜の飯を食う系の絆みたいなものが生まれ、なんか囚われてるのに楽しそうな雰囲気になってたら…
ラストですよ、めちゃびっくりした。
なんで撃つの?って叫びましたよ(心で)。
そしてジュリアンとアチチな仲になっていた渡辺謙は確か誰かを助けようとして射殺されてしまう、というね。
90年代に南米のどっかの国で、起きた事実に着想した話らしいですが、ぜーんぜん覚えてませんね。ティーンエイジャーとはそういうものかもしれません。
リマ症候群を学ぶ
実際に起きた事件をモチーフに、リマ症候群とはこういうことさ、を表現した作品。
私もしっかりテロリスト側に肩入れしてしまい、最後は大切な人を失ってしまったような虚無感さえ感じました。
加瀬亮がとにかくすげえ!!
底なし沼みたいでした。
演技力もすごかったけれど、
一体、何カ国語が話せるのか!!
渡辺謙は英語が堪能なのに、理解できない役で、
これはこれでシュールだわとも思ったりw
何れにせよ、悲しみの中でエンディングだったんですが、
あとから解説を読んだら…
えっ?!そーなの?!
の二人…。
なんだか悲しみ損した気分になってしまいましたが、
私の推しは、ベンハミン指揮官だったので、まあいいやwww.
オペラもアリアも素晴らしさはよく解らなかったけれど、
ハンニバルのクラリスは随分と年を召されたなあと感慨深かったです。
出だし以降は、やわらかい空気の優しい感じの物語かな?と思いながら ...
出だし以降は、やわらかい空気の優しい感じの物語かな?と思いながら ず〜っと鑑賞していたら、いきなり「えっ⁉️」って感じで、非常にビックリしました。驚きました。
ラストが衝撃的です。
気になる方は、、ぜひ。
ただ、観終わった後、やはり胸は痛みます。
※実話を基にした小説の実写化ということですが、ストーリー上、どの辺りまでが実話なのかが非常に気になります。
。。。とてもやりきれなくて切ない。
実際に起きた立てこもり事件をもとに描かれた原作。。。よく映像化が許されたものだと感心しました。
テロ犯罪者と人質、相いれないはずなのに長い時間を共にするうちに奇妙な絆が生まれぎこちないながらに近づき寄り添い重なり合って信をおいていく。
閉ざされた極限状態がなしたのか、銃を手にしつつも正義を求める傲慢さも、苦悩し揺れ動く人のか弱さがいとおしくて、手を差し伸べたくなる気持ちがわかる気がしました。
。。。わかる気がするがゆえに、突入からのラストは大団円なのに。。。とてもやりきれなくて切ない。
それぞれが本当に欲しかったものは何なのか、力に訴えなければならなかった社会情勢、政治と権力の建前、人を守りたいと望む人間らしい優しさ、いろいろと重く、考えさせられる映画でした。
リバタリアン運動って言うから、『バタリアン』が復活するのかと思った(ネタです)
予告編の段階では南米で起こった襲撃事件がストックホルム症候群に陥るのかと思ってた。いや、ほぼスト症(勝手に略してます)なのですが、テロリスト、人質ともに男女混合なので愛が芽生えてしまうという、メロドラマ風人質籠城事件になったことが目新しいのかも。
アメリカ作品であるにも関わらず、派手な救出部隊劇やら、軍隊・警察至上主義みたいなものがない!いや、南米のどこかでやってることだから知らんぷり?フジモリ大統領就任時代にペルーで起こった日本大使公邸占拠事件を揶揄しているのだろうか。しかし、決して時間がかかった理由が政府側のミスではなく、一人のディーバによって加害者・被害者とも心を通じ合わせるという物語になっていました。
犯人側の心情を描いた作品はそう多くありません。テロリスト=非人間みたいな構図を植え込もうと、「テロには屈しない」とか「テロリストの要求には応じない」とか一方的すぎるものが多いはず。ところが“交渉人”という警察内部の役職がクローズアップされてからは、いかに平和的に解決するかというテーマが増えてきたように思います。ここでは赤十字から派遣された交渉人演ずるセバスチャン・コッホがかっこいい。即座に撃たれてもおかしくない状況を、人命を優先し、テロリストの言い分にも耳を傾ける。この人、いつもいい役やってるなぁ。
日本人は渡辺謙と加瀬亮が出演していますが、安定の謙さんは安心して観ていられるし、加瀬くんは何ヵ国語も喋れる天才的通訳であり、台詞を覚えるの大変だろうな~と応援したくなるキャラ。ちなみに日本語、英語、スペイン語、ケチュア語などが登場する。オペラなのでこちらはイタリア語。
敵のコマンダンテも落ち着いた演技で、スペイン語英語を操ることができる。大学も出ていて、歴史の教師もやったことがあるという。喋ってみると、普通の人やんか!と驚くこと間違いなし。そこにはダメでもともと、失敗してもしょうがないという厭世的な表情さえ浮かべるのだった。結末が読めてくる・・・
クライマックス。もう撃たないでくれ。やめてくれ。と祈るような気持ちになり、やっぱり泣けた。二組の新しい愛も芽生えようとしていた矢先の出来事。軍隊は銃を持ってないテロリストも容赦なく殺していくのだ・・・虚しさだけが残る中、やはりソプラノ歌手のルネ・フレミングの歌声が慟哭しそうになる心を癒してくれた。残念な点は、やはりジュリアン・ムーアの口パクが下手であり、高音域の震え方も感じられないほど感情がなかったことでしょうか・・・(-0.5)
人質の音楽会
ペルー日本大使公邸人質事件に材をとった小説の映画化ということだが、その虚実ないまぜの作為がよくわからない。オペラ歌手の件はフィクションなのだろうが、当時のフジモリ大統領の映像らしきものも出てくるし、犯人らがサッカーに興じている最中に特殊部隊が突入したのも事実らしい。完全に架空の国という設定ならいいが、中途半端に実際の事件の要素を混ぜてくるので、誤解されるおそれがあるのではないか。
ストックホルム症候群だとしても、中盤の微温的な日常はちょっとあり得ないほどで、恋愛模様はとってつけたようだ。一方で現実の事件の結末は知っているので、その瞬間がいつ来るのかというひりひりした気分は消えない。犯人と人質の交歓から一転破滅へ陥る展開は、シドニー・ルメット監督の「狼たちの午後」を連想させる。
女兵士カルメンの造型はなかなか良かった。裁縫用の糸と縫い針で傷口を縫うのは痛そうだが。
当時の大統領はフジモリ氏と解ると複雑
摩訶不思議の状況で奇妙なテロリストと人質の関係、最後にテロリストが全て射殺されたにも関わらず、可哀想と感じさせるマジック、勝ち誇った国旗にイヤ気を感じさせる内容。それがフジモリ氏とは。残念です。
加瀬君・・頑張りましたね👏
一連のテロ作品とは少し違いさほど重苦しさを感じなかったのは
少年テロリストや若い女性テロリストがこの道に進む選択しかなかった短い人生のほんの一瞬に大人達に必要と認められたり互いに愛し合える男性に巡り会えた・・
そんな一時の彼、彼女の素の笑顔が
重さを減感させてくれたのかも・・
余談ですがこの作品でオペラ歌手を役じた
ジュリアン・ムーアはジャズシンガーも似合いそう🍀
意外とラフに見られる
鑑賞まえは結構重たい映画かなと思ったら、いい意味であまり頭つかわずラフに見られる作品だと思った。
死人もテロリストとマネージャーと渡辺謙だけだしね。
マネージャーも渡辺謙も誤射だし気分が悪くなるような殺され方は描かれていない。
メッセージ性としてはテロリストとはいえ一人の人間であり、本来は理解しあえる者同士なんだということだと思った。
今回同じ屋根の下で暮らしていく上でテロリストと拉致被害者の間に友情や恋愛、家族愛みたいなものまで芽生き描かれていた。
その為テロリストが射殺された時は、救助された喜びよりも悲しんだ者ばかりだったのが印象的。
それ以外には特に大きな描写はなく、ある意味安心してゆっくり見られる作品。
個人的な価値観としてはテロリスト、テロ行為は断固として許される行為ではないと理解しているため、どんなに根はいい者でも、テロ行為をしてしまった時点でそれ以上の理解はやはり芽生えることができない。
渡辺謙が最後にテロリストを庇って死ぬシーンも、きっかけはテロリスと被害者の出会い方だったとはいえ、一人の人間の命として大切に扱い庇う行為に至ったってのはわかるが…なんかそれ以上のものがなく呆気なく終わったように見えた。
決して退屈に感じたり、つまらない作品ではないが格段新鮮味や驚き、考えさせられる作品でもなかった。素直に見て楽しむのが理想なのかな。
批判の的は…
日本企業の工場誘致を目論む南米某国の副大統領邸で開かれたオペラ歌手ロクサーヌ・コスのコンサート中、南リバタリアン運動の戦士と名乗るテロリスト集団に占拠され、全員人質となる話。
公邸での長期間にわたる人質事件と日系人大統領というところとかは実際の話がモデル。国旗も似てたけど。
テロリストはミズ・コスを除く女性と子供や病人は開放し、非合法収容所に入っている政治犯の釈放を要求するも受け入れられず、立て籠もりが長期化する中で人質達や犯人達の関係が変化していく。
一見するとそんなアホなとなるかも知れないけれど、どこまでかは別にして、この変化は実際にもあった話であり、確かにそんな緊迫した状態を長くは保てないよなと感じるし、作中でのその内容は人間らしくて面白い。
そしてそこから迎える終わりの時。
そのリアクションは現実的とは言えないものもあったけど、ドラマとしてはとても良かった。
全26件中、1~20件目を表示