「エネルギーに満ち満ちた怪作」CLIMAX クライマックス ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)
エネルギーに満ち満ちた怪作
と言うと聞こえはいい。
が、これを映画としてどう捉えるかで評価は分かれるだろう。見終わっての印象はミュージックビデオに近い。
あるいは、『デビルマン』のサバト。これをほぼそのまま実写化した印象か。
ストーリーは至ってシンプル。
舞踊団に応募し、廃屋に集まったダンサー達。リハーサルを終え、始まるパーティ。
興奮しトランス状態になった彼らは、知らず知らずのうちにLSD入りのサングリアを飲まされていて…というもの。
だが、これが冒頭からめちゃくちゃ面白い!
アバンの個性的な映像から全て持っていかれる。そこから始まるダンスシーンの美しさ。
超絶パフォーマンスを長回しでじっくり見せくれる。これだけでも他には変えがたい魅力があった。
ダフトパンクの音楽とハイクオリティなダンス、独創的なカメラワーク。これだけで映像体験として十二分に楽しむ事ができた。
後半のトリップシーンも非常に興味深く、挑戦的な映像の連続。映像と字幕を文字通り上下反転したりと、酔いそうな映像が続く。
しかし、見ているこっちもトリップするような映像かと言われれば、それほどのものでもなかった。R-18指定こそあるもの、バイオレンス・エロ表現も予想していたよりはマイルド。似たような描写で言えば「サスペリア」の方が衝撃的だ。
とはいえ、こういった作品に慣れていない人にとっては、人間が徐々にコワれていく様子にはトラウマ級のショックを受けるかもしれない。人間の理性が薬物によって剥ぎ取られ。本能に従って壊れ、次第に獣と化していく。
前半と後半とで評価がまるで違う結果となった。映像体験として見れば★4.5。映画として見れば★2.5と言ったところ。
刺さるか否かは見なければ分からない。見ないで後悔するくらいなら、見て後悔した方がいいだろう。