「秀逸な映像だけど、物語としては意外性が少なかった点が残念。」CLIMAX クライマックス yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
秀逸な映像だけど、物語としては意外性が少なかった点が残念。
本作はギャスパー・ノエ監督作品ということで、恐らく多くの観客はある程度の心構えができていることでしょう(何の予備知識もなく鑑賞することになった方には同情するしか…)。ノエ監督ファンの間では、本作は比較的観やすい内容という評価のようですが、それでも十分に衝撃的な映像の連続であることは間違いありません。
作品の主軸は明確で、ダンサー達のパーティーに誰かが麻薬を仕込み、楽しい打ち上げが一転して悪夢の狂宴に変貌する過程を描いています。ひたすら狂ったダンサー達の様子を、カメラが執拗に追いかける「だけ」の物語といっても過言ではありません。あらすじを読んで「なんか『デビルマン』(原作)序盤のサバトの場面みたいだな…」と思った人の直観は正しいです。
ただ、作品冒頭で各ダンサーの人となりをインタビューの形をとって描いていおり(『蜜蜂と遠雷』も似た手法をとっていたことが興味深いです)、その言動が中盤以降の修羅場で使われているのですが、インタビューをなぞる程度の使い方のようで、少し肩すかしを食らったような気持ちになりました。
映像は真上からの俯瞰、天地逆転(字幕も)、手持ちの長回しなど、臨場感に充ちていながら美的な感覚を刺激される映像が随所にちりばめられています。全天球カメラで撮影したと覚しきポスターの構図も、本作の狂気を一目で分かる形で示していて、秀逸でした。
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