「人間性=肉体性崩壊」CLIMAX クライマックス Movieアパートさんの映画レビュー(感想・評価)
人間性=肉体性崩壊
ギャスパーノエの映画は初鑑賞
なんとまぁ 他の映画に例えようがない ぶっ飛んだ映画であった。
始まっていきなり エンドロール(エンドじゃないけど)が流れるぶっ飛んだ構成に これがギャスパーノエか! とぶちかまされる。そのあと、まるで後々の地獄への助走かのように、割としっかり長いインタビューシーンを通じて登場人物達の 人間性 とその向こう側にある 危うさ みたいなものを見せた後、怒涛のダンスシーンへ突入。
ソフィアブテラ以外はみんなプロのダンサー(追記、映画秘宝インタビューによるとほぼアマチュアの人もいるとのこと)ということもあって、ダンスシーンのバッキバキ度合いは凄まじくカッコイイ。
個人的にはこのダンサー集団の持つ 肉体性 がこの映画のキモであったと思う。
ダンスシーンの後には 人間って嫌だねー という部分が少し垣間見える会話シーンが少し入りいよいよ地獄の幕開け。
のちに地獄が始まることを知ってる観客としてはこの会話シーンがとにかく不穏!
そしてようやくタイトルが出たらいよいよ…
おしっこ漏らす人あり、妊婦への目を覆いたくなる暴力あり、頭燃える人あり、子供が死に自殺する人あり、
とにかく! LSDに人間性を奪い去られた集団が閉鎖空間で繰り広げる 地獄 としか言いようがない展開のつるべ打ちに見てる側も クラックラしてくる。
執拗な長回しによって抗いようのない没入感があって観る側を地獄から逃してくれないし、クライマックスはもう何がなんだかわからなくなるカメラワークでもう完全なるカオス!
あと、このダンサー集団の人間性の崩壊が=肉体性の崩壊というものと密接に関わっていて、途中のソフィアブテラのバットトリップシーンとか、ダンサーだからこそできる人知を超えた肉体表現が、とてつもないところに行ってしまった人間達の表現としてとても素晴らしい。
全てが終わったあとにそれぞれが迎える朝、そして… という切れ味も良し。
個人的にはもっと直接的にビジュアルに訴えてくる毒性の強い描写があった方がキャッチーさが増して好みだったのと、いくらなんでもインタビューシーンと会話シーンもう少しテンポよく行けないのかな という点が引っかかるけど、こんな映画他にはないのは間違いない。
気になったが最後見ずにはいられない映画だろう。