残された者 北の極地のレビュー・感想・評価
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人間が生きようとする姿を渾身の力で体現したミケルセンを称賛したい
舞台は極寒の地。雪と氷によってスクリーンは白一色に覆われ、まるで何も描かれていないキャンバスの中で、孤独な男が一人、必死にきりもみを続けているようにも見える。そんな中、特筆すべきはこの映画がフラッシュバックを一切用いていないことだろう。過去や未来は描かれない。状況説明もない。そこには圧倒的な現実があるのみ。観客は彼の心の内に入り込むことなく、圧倒的なリアリティから彼の人間性をじかに感じ取らねばならない。
彼がその場でたった一人で孤独であり続けたならば、そのまま動揺することなく最期を迎えられたかもしれない。だが序盤、思わぬところで「守るべき者」が舞い込むことで葛藤が始まる。使命が生まれる。己の命が自分のためだけのものではないという自責と、苦闘が始まる。そうやって初めて意志と希望が湧き出ずる。かくも人間が生きる姿を、その意義を、渾身の力で体現したマッツ・ミケルセンの演技、ただただ圧巻である。
ストイックなサバイバル、研ぎ澄まされた脚本と演技
マッツ・ミケルセンには無骨で寡黙な男がよく似合う。北極圏の雪原に飛行機が不時着して一人生き残り、魚を釣って栄養を確保しながら忍耐強く救難信号を発し続ける……こんな主人公をほぼ台詞なしで説得力十分に演じきれるのは、彼以外にそうそういないのではないか。
監督・共同脚本のジョー・ペナは本作で長編映画デビュー。ブラジル出身で、これまでPVやCMを手がけてきたそうだが、初監督作でなぜ北極圏の遭難者の話?と興味深くもある。だが、説明的な要素を徹底的に削り落とし、ミケルセンの表情と身体の動きで雄弁に語る演出は、すでに達人の風格さえ漂う。
観る前は単調な話で退屈するのではと懸念もあったが、良い意味で予想外。サバイバルの描写に見入り、救助ヘリの事故に心を揺さぶられ、後半の脱出の旅を祈るように見守った。ラストシーンの潔さも見事だ。
オボァガードの必死さに涙する
極北で遭難している男のサバイバルものではあるが、他の似たような作品と何が違うかというと、この過酷な状況を生き残る術はすでに物語の始まりから獲得していることにある。
主人公オボァガードは、太陽が沈まない地域故に、腕時計のアラームで毎日の行動を管理している。
朝起きて、共にセスナに乗っていて不時着の際に亡くなったのだろう仲間を埋葬した地に積んだ石を綺麗にし、SOSの地上文字の雪を掻き、食糧の魚を捕り、通信機に手動で電源を入れ、基地があるであろう方角の山を眺める。そして眠りにつく。
毎日のルーチンは決まっており、シロクマに襲われるなどの不測の事態が起きないかぎり、彼は救助がくるまで生き延びることが出来るだろう。
つまりサバイバルものでありながら、生き残るために戦い、工夫し、努力するような作品ではないのだ。
しかしオボァガードを救助に来たヘリコプターが墜落していまい、乗っていた女性隊員が重症をおうことでドラマが動き出す。
瀕死の女性を救うためには、自分一人ならば生き残れる安全を捨て、更に過酷な基地を目指す行動にでなければならない。
人は自分のためよりも誰かのための方が力が出るものだ。
単独の時よりも怪我人を伴うため確実に困難であるにもかかわらず、過去に来て挫折したであろう旗の位置を越えていく。
極北が舞台でなくとも描けるようなシンプルなヒューマニズムの内容で、ありきたり過ぎて退屈な内容ともいえるわけだが、非常に面白く観られるのはマッツ・ミケルセンの演技と、作品内のオボァガードの必死さや、細かい機微にある。
魚以外の食糧にかぶりつく、大きな魚が釣れて喜ぶ、人の温もりに触れ生を実感する、温かい食べ物に安堵の息をする。
常に冷静な男が僅かにみせる感情に目が釘付けになる。
そして何より、女性隊員に泣きながら謝る場面は涙なくしてみられない。
オボァガードはここまで必死に頑張ってきた。すでに限界だって越えているだろう。一度は女性隊員を見捨てた彼を誰も責められないと思う。
怪我をし体力も少なく、少しでも身軽にするために生きるための道具の多くを捨てた。遠くにヘリコプターの姿を見て合図のために防寒のジャケットも失った。
気付いてもらえず、倒れ込むオボァガード。それでも意識を失いながらまだ大丈夫と言う姿に、もう無理だ、限界だと絶望を感じた時、希望のヘリコプターが現れ、長く続いた私の緊張もやっととけるのだ。
先にも書いたが、シンプルな内容を丁寧に力強く伝える脚本とマッツ・ミケルセンの演技がとにかく素晴らしい。
言葉ではなく映像で伝える、映画のあり方の手本みたいな作品だった。
生きることを諦めない
ただひたすら生きるために試行錯誤し、極限の状態の中、生への執着を捨てない主人公。これ以上ないストイックな映画。
背景にはほぼ触れず、事の詳細も一切説明がないが、ミケルセンの表情や行動、数少ない言葉で全てが理解できる。素晴らしいの一言。
途中から一緒に行動する女性に、どれだけ危機的な状況であっても、むしろ危機的である程、大丈夫、問題ない、と言い続ける姿には心を打たれる。
ラスト、力尽き倒れる主人公の背後を見て、こちらも安心して体から力が抜けた。
マッツの演技が素晴らしい!
やっぱりマッツは素晴らしい
カルマ
おそらくだけど、主人公は初めの墜落で誰か大切な人を亡くしたんだと思う。
ただ強烈な生存本能に突き動かされながら、
でも冷静に生き残る可能性を拾い集めていくような毎日。
そしてふいに”自分のせいで”瀕死になってしまった人を助けるため、
大きなリスクを負って歩き出すことで物語は動きはじめる。
極限の状況もあって、生きるということを描き出そうとした力作じゃないか。
全てが真っ白に凍る景色はほとんどワン・シチュエーションの趣きだし
物語を動かす要素もほとんど主人公の行動ひとつ。
説得力のあるシンプルな構図から浮かび上がるのは、やはり生きることの生々しさで
他者がいるからこそ生があるっていうメッセージだったと思う。
コロナ禍で多くの人がままならない毎日を送る中、
さまざまな断絶が社会の中に生まれてきたように思う。
人を思いやり、人のために行動することは、因果応報というほど回りくどくなく
もっと直接的に自分が生きる糧になり得ると示してくれた作品だった。
マッツ・ミケルセンの過酷な一人芝居を見れる稀有な作品
まあ、なんとも、
見どころあるかな?
寒かった…
寒さがこちらにも伝わってくるような演技。
暖かい布団、温かい食べ物…幸せです。
唯一リアルじゃない感が強かったのは、食糧。移動し始めてからほとんど飲まず食わずであれだけ動ける(かつ、ケガ人が死なない)ことってあるのかしら…と思いながら観ました。
布団で眠る幸せ
マッツミケルセンの素晴らしい演技のおかげで、
見終わってから布団で眠るのが楽しみで仕方がない。
極寒の中サバイブする様に眉間に皺寄せながら観た。
観れば観るほど布団の暖かさありがたさが分かる。
今日は良い夢見れそうだ。
今まで見た映画の中で最も台詞が少なく、
景色も変わり映えしないのだけど、
どんどんやつれて行くマッツミケルセンの表情が
言葉以上に過酷さを語っていた。
主人公の過去や辿ってきた人生が分からないので、
感情移入しにくいなと初めは思っていたいたけど、
雪原の中ではどう生きてきたがなんかどうでも良くて、
過去も未来も関係なく、
ここをどう生き抜くかそれだけで良いのだと
思い知らされた。
マッツミケルセンの凄さを堪能できる一本だと思います。
サバイバル・モキュメンタリー
原題:Arcticは北極、撮影はアイスランドで行われたそうだ。
極地に不時着した中年のパイロットのサバイバル映画、余程気流の悪いところなのだろう救難信号を受信して近づいてきたヘリも墜落、かろうじて生き残った女性は意識朦朧の重体。
彼女を救う為にヘリに残された地図を頼りに近くの観測所を目指して、病人を載せたそりを引きながら雪の原野を只管進んでゆく・・。
立ちはだかる雪山、極寒のブリザード、白熊の襲撃、クレパスへの落下、演じている方も大変だろうが観ているこちらも凍え死にそう。
孤独なサバイバルではマットディモンの「オッデセイ(2015)」、不時着ものでは「飛べフェニックス(1965)」が思い浮かぶが本作は至って地味、生を賭けた男の大自然への孤独な闘いをまるでドキュメンタリーのように淡々と映すだけ、それでいて否応なくスクリーンに惹きこまれるから不思議だ。マッツ・ミケルセンさんの抑制のきいた演技もさることながら、脚本・監督のジョー・ペナさんの作家性ならではでしょう、元はYoutuberで長編初監督とはとても思えません。
ただ、このシチュエーション、雪山好きの山男・女さんなら別ですが寒い冬場の鑑賞は微妙でしょう。
無駄がないぶんだけ完成度が高い
説明がないけどわかる。映像で成立してる。
その無駄がないぶんだけ完成度が高い。この題材と手法の相性がよいのだと思う。
自然の極限状態に置かれるという設定だと、岩場で腕を挟まれて生還する127時間が近い内容。これは創作なのかな。発生するトラブルのタイミングや順序が少々わざとらしい。
しかしおそらくあの環境で長時間ロケを行っているぽいしリアルな出来栄えはすばらしい。
葛藤!
私は好んで山に登ります
高校の頃、白馬や剣岳、などなどいくつかの山を登り今は低山ハイクでお茶を濁してますがまた2000m級の山々へ行きたいと思っています
下準備をしっかりしても山では何があるかわかりません
道に迷ったり尾根で突風に吹かれたり落石があったり足をくじいたりと、でわでわそうなれば「遭難」となりかねない
装備はそこそこしてますが今は低山ばかりでフル装備とまではしてないのでいざ遭難となるどうなることか
進むべきか留まるべきか、上か下か、とにかくその時の判断が命をどこまで繋げることが出来るのかが鍵になるのだと思います
体力だけでは乗り切れない、疲れて疲れて最後には気力だけが助かる切り札になるのだと思う
諦めるのは簡単なんです、楽になりたいと思えば冬の寒さの中でも心地よく眠るようにいけると思います
最近の私のキーワードは「あきらめない」なんですよ
その前は「めんどくさいと思ったら負け」コレはめんどくさいな〜と思ったらその事を即座にしなくてはならないという決まりを自分に課してました
今は「あきらめない」です!
もうダメだと思ったら一息ついてもう一踏ん張りしなくちゃダメと思うようにしてます。
苦しいのは誰だってある事だからそこを何とか誤魔化してても先へ行く、その先はきっと素晴らしい景色があるように思いたいのです
ぶっ倒れるなら前のめりにいきたいものです。
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