「抜け殻になった心弱き独逸男が、日独の妖たちにより徐々に再生していく姿を幻想的に描いた令和怪異譚」命みじかし、恋せよ乙女 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
抜け殻になった心弱き独逸男が、日独の妖たちにより徐々に再生していく姿を幻想的に描いた令和怪異譚
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不可思議な気配が漂う映画である。
妖の姿が朧げに動き回り、死の香が常に揺蕩う。
前半の独逸パートでは、ふわりと現れたユウとカールの現実離れしたような生活の中、彼が直面する過酷な現実と彼の周りを漂う親族(生死問わず)たちとの複雑な関係が描かれる。
ブッテンマンドルたちも土着の祭の中で現れる。
後半の日本茅ケ崎パートでも、妖はカールの周りに出没するが、生への執着が芽生え始めたカールはあまり、惑わされない。
そして、投宿した樹木希林さん演じる老女将と二人で浜降祭の炊き出しを準備する中、老女将から驚愕の言葉がカールに告げられ、彼は浜に駆け出していく。
茅ケ崎の旅館の夜の庭のシーン。匂いたつように咲く酔芙蓉を、カールと老女将が眺める後ろ姿の尋常ならざる美しさ、艶やかさは忘れ難い。
私は、樹木さんがこの作品に出演された理由は
<命尽きるまで、前を向いて生きよ>
というメッセージを遺したかったからではないか、と思った。
お盆が過ぎた日に、儚くも鮮烈で、実に美しい映画を観ることができた。
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