キュクロプスのレビュー・感想・評価
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自主制作ながらしっかりした作り
雰囲気のあるロケ場所を絞り込んで、その中で構成する事で低予算でもしっかりノワールしている良作。
斬新ではないがどんでん返しもきっちり入って飽きさせない。
若干、主人公の状態にリアリティがないが、役者の演技でねじ伏せている。
自主制作とは思えない出来でした。
不勉強なもので、キャストも主演の池内万作さんくらいしか知らなかったのですが、皆さん魅力的でしたね。
斎藤悠さん、お父様の斉藤洋介さんと顔立ちはよく似てらっしゃいますが、お父様と雰囲気が違い恰好良い方ですね。
斉藤悠さん演じる西も前半と後半では雰囲気が違いましたが、松尾役の佐藤貢三さんも序盤から中盤に掛けてと終盤では顔つきが全く違っていましたね。
さすがベテランさん。
そして何より杉山ひこひこさん演じる財前が凄く佳いキャラクターでした。
小柄で礼儀正しく物静かな印象だからこそ、その凶暴性が際立っていましたよね。
周りを身長の高い役者さんで固めたのもキャラクターを際立たせるのに一役買っていましたね。
脚本も、そこら辺の一流と言われる監督のものより余程上手く出来たものでしたし、終わり方も良かったですね。
映画の余韻が残るエンドロールもセンスを感じるものでしたし、大庭功陸監督には是非これからも頑張って良い作品を生み出して欲しいです。
悪の諸相
ガラガラの劇場で鑑賞。
作り手には申し訳ないけど、ガラガラの劇場で観るのには心情的にピッタリの映画だった(良い意味で)。
つい応援したくなり、初レビュー。
「全員悪人」とでも言いたくなるような悪の諸相。
そこには、悲しい悪、無邪気な悪、底の知れない悪、善の裏返しとしての悪、廃れた悪、等々まるで悪の見本市のように、ぶっきらぼうに悪が並べられた世界がある。
それら悪を演じる登場人物らに目を奪われながら、「果たして自分にはどんな悪が潜んでいるんだろう?」そんな事を考えた。映画を観ながらそんな事を考えるのは初めてだった。
だから、主人公・篠原の最後を無邪気に肯定したくなったのかもしれない。夜の新宿に相応しい映画だ。
ポリュペモスとガラティア
ホテルで市議会議員と密会していた嫁が殺された上に、アルコール依存症であったことと現場にいたことから、犯人として服役した旦那の元に、冤罪であったと告げる刑事が現れ、復讐を画策する話。
冤罪ではあったが刑期は終えており、再審を求める気もない主人公と、法では裁けない真犯人への私刑に目を瞑るといい、更には協力者を紹介する刑事。
堅気とは思えない強気でやさぐれた主人公に、ヤケにへーこらする刑事、そこにチンピラが絡んでちょっと違和感のある復讐計画が進んでいく。
確かにノワールらしいし男臭さと重々しさはあるけれど、テンポが良いというよりも様々な切っ掛け部分をすっ飛ばしたり急ぎ足だったりで、ご都合主義満載に展開して行く。
そりゃそうなるわな。な流れだったりマッタリ感の足りない透かしだったり、物足りないところも結構あったけどなかなか面白かった。
ちなみに…キュクロプスは英語読みでサイクロプスね。
最後まで目が離せませんでした
ひりつくような焦燥感。周りに翻弄され、復讐に取りつかれ、でも自分が求めていたものが何かわからなくなりまた湧き上がる焦り。
じりじりと身を焦がす凶暴な衝動。
静かでどんよりと濁った息のつまるような演技のぶつかり合い、激しいけれど暗く静かな海に飲み込まれるように引き込まれて、、、最後まで目が離せませんでした。
どこか懐かしい作りの映像も物語によくあっていて。おもしろいとは違いますが、とても興味深く、とても素晴らしい時間を過ごしました。
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