夏、至るころのレビュー・感想・評価
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ツッコミどころが多くてモヤモヤ
多彩な池田エライザさん
勢いのある若手女優が監督を務めたという話題性の高い本作ですが、決して上げ膳据え膳のお飾り監督ではなく、エライザさん自身がしっかり制作に関わっている姿勢は尊敬に値します
きっと現場で共に汗して、チームで映画を創作していくことが大好きな人なんだろうなと想像します
まだお若いのに立派で、ますますこれからの活躍が楽しみな才能です
そんな監督への個人的な興味はもちろん、本作はSNS上での評判がよいので期待を持って見てみたのですが・・・
ピクルスや小鳥、笛、ギターなどの小物使いがさりげなく効いていたり、崎山蒼志氏の書き下ろし楽曲をテーマに持ってくるあたりはさすがだなと思いましたし、照明や色使いなどはとてもきれいで印象的なシーンはいくつかあったものの
うーーーん
決して悪くはないんだけれど、また見返したくなる映画か?と聞かれたら「一回でいいな」というのが正直な感想でした
まず、メインキャスト3人の心理描写が圧倒的に不足しており、心情の変化に合わせた決定的なシーンに対して共感・没入できるポイントがない
(あえて余白を多めにしたとも想像できるが、それにしても少ない)
この映画のハイライトと思われる、プールでのシーンに行き着く時間の流れに無理がある
(食堂でお昼を食べて→ギターを持った少女に遭遇して→学校に忍び込んで・・・、でいきなり夜!夏の設定なのに日が暮れるの早すぎない?)
主人公の両親が若すぎて、ミスキャスト感がある
(なぜか主人公と父親の間に距離感があり、連れ子なのかな?と余計な想像ばかり膨らんでしまう)
ラストでなぜ主人公は単身海外に行ってしまうのか
(そんな片鱗あったっけ?しかも子供が旅立つというのに両親や祖父母は見送りもしないの?)
あと何と言っても最大のモヤモヤは、「そもそも田川って、そんなにピュアな街じゃない」
(映画では田川独特の土着的な匂いが消え去っており、美化されてる)
いろいろ考えた末、本作はファンタジー映画として捉えたほうがいいのかもしれないという個人的な結論に至りました
繊細な視点から素直に丁寧に描かれる真夏の青春映画でした。
うだるような暑さの中で蝉の声が鳴り響く公園。不安定なネットで作られた遊具の上で会話する主人公とその親友。夏休みを機に親友は受験に専念するために主人公と一緒だった和太鼓の稽古場には行かないことを宣言する。戸惑う主人公。
この心が不安定な心の揺らぎが表現されていた素敵な導入部だった。
彼は自分の将来の夢を「空気」と教室で答えてしまう。この「空気」という言葉が様々な語り口で観客に提示される。『幸せの青い鳥』のエピソード。じいちゃんの夢として語られる、おばあちゃんのことを大事にすること。食卓を家族で囲むこと。家族との時間を大切にすること。自分の内側と向き合うこと。(この映画は確かにボーイミーツガールの展開もあるが、そこでの女性との出会いは恋や愛だのという流れではなく、あくまで一過性の出来事に過ぎず、自分の内面について見つめ直すきっかけを与えてくれたというのが面白かった)たとえ物理的に離れることになっても、離れてしまっても遠くからでも側にいても大切な人のことを想うこと。こうした想いを持つ存在になることを「空気」の意味として形を変えて散りばめらている。この映画は池田エライザのスタンドバイミーだった。
・飼っている鳥と戯れているリリー・フランキーの縁側のシーンは美しかった。声が漏れてしまった。あのカットのラストの一言はアドリブだったのだろうか?
・シャッターの閉まった商店街を主人公と親友で自転車を転がしながら話をするシーンは一番良かった。
・デビュー作がこのクオリティというのは素晴らしいと思う。
・両津勘吉のお化け煙突を知る昭和世代に注意。ハンカチ必須。
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