「【”大人になると色んなモノが分からなくなる・・””けれども、何を信じるかで人生は変わる”台湾の小さな街で育った女の子がイロイロ迷いながらも成長し、ある生き方を決断する姿を近代台湾史を絡めて描く。】」幸福路のチー NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”大人になると色んなモノが分からなくなる・・””けれども、何を信じるかで人生は変わる”台湾の小さな街で育った女の子がイロイロ迷いながらも成長し、ある生き方を決断する姿を近代台湾史を絡めて描く。】
ーチーは1975年4月5日生まれ。4月5日は蒋介石が亡くなった日である・・。活発な少女時代を幸福路”シンフールー”で過ごし、アメリカ兵を父に持つチャン・ベティやガキ大将、シェン・エンと知り合う。-
・物語は、現代、アメリカで暮らすチーが祖母の死を弔うために、久しぶりに幸福路に帰ってきたところから始まる。記憶とは随分違う街の姿に戸惑うチー。且つて、隣の席に座っていた腕時計をはめた少年は選挙運動をしている・・。
・台湾の民主化運動が盛んな頃、彼女は育つ。
従兄は、”禁書”を読んでいたために、色覚異常のきっかけになる怪我を官憲から受けたことや、学校では台湾語は禁止され、北京語を使うことを強いられる場面が描かれるが、少女のチーにとっては余り気になる事ではなかった・・。
ーこの辺りの当時の台湾を取り巻く中国との微妙な関係のさりげなく描かれる。ー
■印象的な事
・台湾近代史を絡めながら、物語はチーの過去と現代を行き来しながら進む事。
・今作の一番の魅力である、チーのアマー(おばあちゃん)はチーが小さい頃から、チーの意思を尊重し、彼女の生き方を応援する。
劇中語られる、アマーがアミ族であることが今作で重要な要素であることが、良く分かる。アミ族は母系社会なので、アマーの意見は当然尊重されるのである。
チーもその血を1/4継いでいるのである・・。
・チーのアマーは死後も悩める大人であるチーの意見を尊重し、貴重なアドバイスを贈る。”地に足の着いた生活を・・”
・アメリカで生活をしていたチーは(この辺りも、台湾の民主化の影響であろう)アメリカ人男性アンソニーと結婚するが、子供を持つかどうかで意見が合わず、離婚前提の関係になっている・・。
ーアンソニーの描き方も自然であり、二人は不和と言う訳ではなく価値観の相違のため、離婚を考えることになる・・、という設定も違和感がない。哀しい事であるが・・。-
・チーは幸福路で且つての友人、チャン・ベティやガキ大将だったシェン・エンと久しぶりに再会するシーンも良い。
チャン・ベティは幼い娘、息子を育てており”子供がいるだけで幸せ”と話すし、シェン・エンも”学はないけど、家を買ったよ・・”と、皆何だか幸せそうだ・・。
けれど、ベティは台中に戻り、シェン・エンは921地震により・・。
ー出会いと、別れ。これも又、人生であろう。-
・チーが帰ってきた事で、張りの無い生活をしていたチーの両親の暮らしが徐々に、キチンとした生活になっていく部分。そして、チーの両親が如何に彼女を大切に育ててきたか、そして彼女が久しぶりに台湾に帰ってきた事を喜ぶ姿。
<アミ族の血を引くチーが、大人になるにつれてイロイロと悩みを抱える中、チーのアマー(おばあちゃん)は死後も優しくその姿を見守り、チーの両親も彼女を暖かく迎える。
そして、チーの自分の生き方を決めた決断とは・・。
アニメ産業が殆どなかった台湾から生まれた、素敵な一人の女性の半生を描いたアニメーション映画。とても、良い。>
NOBUさんへ
仕事帰り中のbloodです。台湾映画って、何か切ないですよねぇ。日本に持ち込まれるのが、そう言う作品ばかりなのかも知れませんが。コレも良かったですね!