「台湾版『思い出ぽろぽろ』のような映画でした。」幸福路のチー ガーコさんの映画レビュー(感想・評価)
台湾版『思い出ぽろぽろ』のような映画でした。
過去の自分を台湾に残して、アメリカで暮らすチーの物語。
小さい頃のお婆ちゃんの思い出とともに、幼かった自分の行動や気持ちなどが、現代の自分に訴えかけてきます。
今の自分はこれでいいのか、もっと幸せな人生を望みたい。
理想と現実の狭間で迷い続ける姿が、同年代の自分と重なって、観ていてとても切ない気持ちになりました。
小さな頃は、自分の望んだ夢や願いは全部叶うって信じていたチー。
友達と一緒に泥だらけになって、川や広場で遊びながら毎日が楽しかったのに…。
いつから自分は、あの頃の自分を忘れてしまったんだろう。
高学歴で両親からも沢山の愛情をもらってきたはずなのに、親のしいたレールに従うなんてまっぴらだと、己が道を突き進むことに決めたはずだったのに…。
気がついたら1人孤独になっていた自分。
このまま台湾にいてはダメだと、心機一転渡米し、そこで出会ったアメリカ人と結婚して子供も作って、幸せになれると信じていたのに、なかなか理想と現実は難しい。
女性って仕事に子育てに結婚に、悩みが尽きないものですが、チーが女性の代表として、女性の悩みを全て訴えているようでした。
そして、この映画は女性の働き方だけでなく、台湾の歴史についても触れています。
1980年代の台湾では、台湾語の教育ではなく北京語の教育が義務付けられていたことを、この映画で知ることができました。
中国に国が支配されて、台湾の人たちの自由が中国の政治に奪われていく時代の中で、チーも皆と一緒になって開放運動に参加している姿が印象に残りました。
基本的に優しく楽しいアニメ映画ですが、所々に中国の政治問題が絡んでいるところがなかなか鋭い。
多分これ、中国で上映するの絶対無理なんだろうなと、なんとなく予感させる描写がたくさんあります。
ちょうど今、台湾の若者たちが運動を起こしているからこそ、余計に色々と深い意味を汲み取ろうとしてしまう自分がいました。
チーの頭の中の考えていることがファンタジーに溢れていて、若干ぶっ飛んだ描写がありました。
でも、空想と現実がバランス良く描かれているので、気がついたらどんどん引き込まれました。
ジブリのようかと思ったけれど、ちゃんと自国のテーマを取り上げているところが素晴らしい。
これからの台湾アニメが楽しみに感じられる、素敵な作品でした。
ありがとうございました
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