「そして 自分の事も愛してくれてたか」シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢 えんぞさんの映画レビュー(感想・評価)
そして 自分の事も愛してくれてたか
(ネタバレ前に⚠️入れました)
とてもよかった。 この作品に登場する人々に 心の紆余曲折はないんですね。 貧しく生活は苦しいが「生活か?愛か?」のような選択の問題はまるで相手にしていません。 その人間が何を求め、何を選ぶかに一切の迷いはなく、むしろそのためにどう動くのか? それをどう伝えるかを描いています。
これまでの人生で 誰かを全身で愛したことがあるか、心底誰かの愛を求めたことがあるか、この映画をみるとわかるのではないかと思いました。
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⚠️ 以下、ややネタバレです
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大本題の宮殿と娘、そして奥さんへの愛の話とは別に、自分は息子の存在に強く打たれました。
幼少から離れて育った息子は 成長し自立したのち 父を慕い戻ってきます
しかし 父は感情を表わすのが苦手で 傍にいるのを許しはするが 息子には父の気持ちがわかりません わからないままです
それでも息子は父に愛されたかった
自分のことも愛して欲しかった
一度は捨てられたような存在
それで彼がヒガんだりネタんだりしちゃっても責めることはできません
この息子だけが生活力をもち子孫を増やし 家族をつないでいく
しかし彼の死の描写はあっけなく 死因も明かされません
自分は愛されていたか
それが息子本人に伝わっていたかは 明確にはわからないままです
でも息子はそれについて恨み言を云ったことはなかった
これで彼もまた 父や家族への愛に一切の迷いがなかったのだとわかります。
最後の最後で 息子のそれが強く感じられるシーンがあります、もう本当に切ない。 そしてそれは人として美しいと思いました。
そして彼もしっかり愛されていたのでした、よかったね。
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