「【”日常の屈託を癒すために泥酔する父親の日々” けれど、妻や子供の人生を変えてしまう様な男には同情の余地なし、とラストシーンの直前まで思いながら鑑賞した作品。】」酔うと化け物になる父がつらい NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”日常の屈託を癒すために泥酔する父親の日々” けれど、妻や子供の人生を変えてしまう様な男には同情の余地なし、とラストシーンの直前まで思いながら鑑賞した作品。】
ー 今作の原作者である漫画家、菊池真理子さんは、片桐健滋監督に”きれいな家族愛の話にしないで下さい”と要望したそうである。
このことからも、菊池さんが幼い頃から父親の飲酒癖に苦労してきた事が偲ばれる・・。ー
■感想
1.今作では、様々な化け物が登場する。
1)サキ(松本穂香)の父(渋川清彦)
妻(ともさかりえ)を縊死に追いやり、暫く断酒していたものの、又飲酒を始めるサキの父の姿。酒が弱いとは言っても、明らかなアルコール依存症である。
それでも、会社では人事部で、キチンと仕事をしているのが、やや不思議。酒が弱いからアセドアルデヒドが生成されず、二日酔にならないのかな・・。
2)サキ(松本穂香)の母(ともさかりえ)
家庭内で、祝日昼から麻雀をする夫や、その友人達を窘めることなく、言われたまま酒を出す。だが、そのストレスから”離婚したい”と言う想いを抱えつつ、新興宗教に嵌っている姿。
被害者でもあるが、サキやフミに心労を掛け、自らは縊死してしまう・・。
哀しき化け物である。
3)サキの恋人、中村
表面上、優しいが、実は粘着系DV男である。
精神的にも少しオカシイのではないか?
2.サキの化け物たちに対する対応方法
1)不満や屈託を呟くだけで、自ら主体的に対応しない姿。
だが、その思いを不愉快な父の姿をコミカルな漫画として描くことで、昇華させた。
2)愚かしきDV男に対する対応も然り
3)ステージ4のガンを告知され、血を吐く父を見る哀し気で、複雑な表情・・
<サキの父親の愚かしき姿を長年見続けてきた哀しき表情が、切ない作品。酒は飲んでも吞まれるな、という当たり前の事を、コメディタッチで描こうとした作品であるが、笑えないなあ・・。
けれど、最後、壁に書き込まれた言葉や、父が会社に遺していたサキの幼き時に書いた絵を見て、”実際の化け物は中村位で、皆、必死に生きていたのかも知れないなあ・・”と思った作品。>