劇場公開日 2020年3月6日

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「サキちゃん、あなたは悪くない」酔うと化け物になる父がつらい みげるこさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0サキちゃん、あなたは悪くない

2020年9月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

コメディタッチで描かれているけど、アルコール依存と家族の問題をすごくリアルに描写してくれた佳作だと思う。よくこの作品を世に出してくれたな、と感謝です(タバコやお酒といったテーマをこのうな切り口では出しづらいですもんね、業界の力も強いし好む人が多い私たちの日常に馴染みがありすぎて)。

この作品を観て、自分がどうしてお酒が嫌だったのかわかった気がする。
子どものころから親戚の集まりでは必ずお酒が振る舞われ、
①父は飲むと陽気になるからかみんなが飲ませたがり、どんどん父の人格が変容していくのを為すすべもなく見てた&母もとめられずただ不機嫌にはなっていった。
②お酒に強いのがエライ!雰囲気が急に広がり出した。
③酔っぱらうのは必ず男性陣で、お酒時間が始まると急に母たち女性陣がかいがいしくお世話を始めた。
④普段そんなに親しくないおじさんたちもお酒入ると急に馴れ馴れしく話しかけてきたり、父に話しかけても”いつもの会話”ができなくなって「みんな人が変わっちゃう」のが子供心に恐怖だった。
⑤”酒の席は無礼講”とどんなに醜態をさらしても当の本人や勧めた周りも責められることなく”無かったこと”にしなきゃならなくなる 。
…ざっと思いつくだけでもこれだけのことを想起させられた。劇中のサキちゃんは「家族のことを何も考えていないお父さんが、無関心だったのが嫌だった」と言っていたけど、私は「お酒を飲むと、ちゃんと人同士として関われなくなってしまう」感じが嫌だったのだ。
お酒の良さって何?私は未だにわからない。薬物ですよね。

最後のお父さんのあのメッセージは、お父さんも辛かったのだろう(だから治療してほしかった)けど、サキちゃんにとって何てひどいことするんだろう…と思った。あの家族の周りに適切な大人がいなかったのが本当に気の毒。周りの大人、誰一人としてちゃんとしたアルコール依存の知識を持っていなかったっぽかったもん。

サキちゃん、ほんと大変な半生を頑張って生き延びて来たよね。あなたのせいじゃないよ。

みげるこ