「お涙頂戴でなく、クスッと笑えて心暖まる」浅田家! さうすぽー。さんの映画レビュー(感想・評価)
お涙頂戴でなく、クスッと笑えて心暖まる
予告観た限り、お涙頂戴?
いやいや、普通に良い映画でした!
「湯を沸かすほどの熱い愛」の中野量太監督が、「家族写真」を撮った実在の写真家、浅田政志氏の写真集を原案として描かれた彼の自伝的映画。
自分は「湯を沸かすほどの熱い愛」は観てなかったので中野量太作品は初鑑賞です。
個人的にこの映画は予告だと感動を力づくでかけようとしてるお涙頂戴映画に感じたのであまり期待はしてなかったのですが、TwitterのTLでの評判が良かったので鑑賞を決意しました。
お陰で鑑賞し損ねるところでした!(笑)
まず、この浅田家のやり取りが凄く面白いです。
二宮和也が演じる政志さんのグータラだけど面白い発想をする人物像が興味深いし、彼を取り巻く家族もそれに巻き込まれていながらどこかユニークで面白いです。
その浅田家の4人を演じたキャストがみんな素晴らしかったのも面白さがプラスされたのだと思います。
風吹ジュンと平田満が演じた両親も個性的な浅田家の両親として素晴らしく、政志さんのお兄さんを演じた妻夫木聡も真面目で良心的な長男を見事に演じられていて、その政志さんを演じた二宮和也もここ最近の中で一番役にはまっていた気がします。
個人的に一番好きだったのが、二宮和也と妻夫木聡のやり取りです。
二宮和也は次男に見えるし、妻夫木聡は長男役者が凄く合っているので、凄く仲の良い兄弟に見えるし、その掛け合いも面白かったです。
あと、二宮和也の恋人役の黒木華も良い女房然としていて良かったし、演技も良かったです。
また、浅田家の家族写真を実際に撮る場面も描かれています。
鑑賞後に本屋に行ったらたまたま実際の「浅田家」の写真集が置かれてたので見てみましたが、凄まじいほどの再現度でした!
劇中であれだけ再現するには政志さん本人が撮らないと再現出来ないはず、と思って調べたら実際そうでした(笑)
浅田家キャストで撮った家族写真は浅田政志さん自ら撮っています。だからこその再現度だと実感しました。
ただ、ストーリーの前半は浅田家の家族写真が賞を取って家族写真を撮り始めるサクセスストーリーですが、後半は東日本大震災のストーリーが展開されます。
東日本大震災の時に政志さんはボランティアとして写真の返却をするエピソードがあるのですが、そのエピソード自体は正直前半のストーリーに比べるとそんなに面白く無かったです。
浅田家の個性的な掛け合いややり取りが面白かったのに対し、後半の東日本大震災のストーリーは正直他の邦画に有りがちな感じになってしまったのが残念です。
被災地の瓦礫の山を再現したのは素晴らしかったのですが、正直長く感じてしまって少しダレました。
また、この映画全般のテンポなのですが、もう少しペースを早めても良かったと思います。
全体的にペースが遅く感じました。
せっかく浅田家のエピソードが面白いので、もう少しテンポ良く展開されたらもっと面白くなれたと思うし、何なら傑作級の映画になり得たと思います。
あとこれに関しては映画に直接関係無い所になりますが、あのお涙頂戴感が出てる予告編は完全にやり過ぎだし作品のトーンと合ってないです。
「最高の感動作」というキャッチコピーじゃなくて浅田家のユニークな姿を全面 に押し出した方が良かった気がします。
あの予告編だと自分みたいな人は完全にシラけます。
「傑作!」とまではいかないものの、普通に良い家族映画として、クスッと笑えて少し心暖まる映画になっていたと思います。
この映画を観て、浅田政志さんの写真を見たくなりました。
なので、もう早速予約しました(笑)